【第160話】売れていく新商品・新サービスの開発に欠かせない要素
「○○という素材の抽出に成功しました。これを商品化すればとても売れると思うので、お手伝いいただきたいのですが…」。
このようなお話に頭の下がる思いがします。人知れず粛々と創意工夫を重ねてこられたのです。その努力がもう少しで世にお披露目されようとしています。
こういった工夫努力を惜しまない方々によって、世の中が動いているんだなとつくづく感じる瞬間でもあります。
一方で、人のアイデアに便乗したり、パクったりする人たちが何と多いことか。情けないし嘆かわしい限りです。
さて、事業のネタが出来上がったとしても、そのネタをしっかりと商売に仕上げていくためには、もう一段の工夫努力が必要です。すなわち、一般に“事業化”と呼ばれる準備プロセスにも相応の工夫が必要です。
そうであるにも関わらず、そこに意識が足りない場合、ネタができた時点で、商売ができあがったと勘違いしてしまいがちです。そうなると、せっかくの可能性あるネタを潰してしまうことになりかねません。
新商品・新サービスの開発にあたり大切なことは、「何を開発しようとしているのか?」ということに関する意識です。
我々は、新しいネタ、新しい生産技術、新しい売り方…といった要素そのものを開発しようとすることが目標ではありません。「新しい商売を創って繁盛させよう」としているのです。
では、「新しい商売とは何か?」。これは「“新しい”を決めるのは誰か?」と置き換えて考えるべきことです。
もうお気づきのことと思いますが、見込みのお客様にとって“新しい”商品・サービスが、新商品・新サービスなのです。決して自分たちにとって“新しい”が、新商品・新サービスではないのです。
ですから、「こんな新規事業始めました。こんな新商品、販売開始しました!」は、自分たち、仲間内にとっての「おめでと~!」であっても、そこまでなら、語弊を恐れずに言ってしまえば、「誰にでもできること」でしかないのです。
ですから、お客様にとって“新しい”はどのように生まれるのかということに、理解を深めておくことが大切です。
“新しい”が生まれる要素はいくつかあります。弊社でプロジェクトを進めていくにあたって、この“新しい”の設定を「開発要素」と呼び、大変重要視しています。
「開発要素」を絶対に一つ以上設定しないと、お客様にとっての新事業・新商品・新サービスにならないからです。
“新しい”の切り口には、「史上最強のツヤハリ美肌」といったお客様の効用であったり、「会計ソフトをクラウドでご利用いただけます」といった利用や課金に関するもの。そして、「○百万円の折りたたみ機能付き洗濯機」といった価格帯が新しいといったものもあります。
こういった具体的な“新しい”も大切ですが、実はそういった具体的な“新しい”をより一層高めてくれる要素があります。
それは「取組み意志」です。なぜ、何のために、その事業・商品・サービスに取り組んでいるのか…という意志、経営体としての挑戦意欲の根源の違いです。
例えば、理想の未来に向かっていたり、既得権益と戦っていたり、古い悪しき業界慣習を壊しにかかっていたり、常識を覆すことに挑んでいたり…といったことです。
この取組み意志が“新しい”こととは、すなわち事業の大義名分がハッキリしているということです。ですから、人の記憶に残りやすく、その企業が取り組むべき事業としての文脈が成り立ちやすくなるのです。
御社が新たに世に放つ新商品・新サービスにとって「取組み意志」は欠かせない開発要素であることをお忘れなく。
その新商品・新サービスになぜ取り組むのですか?
新商品・新サービスには、しっかりと“新しい”が埋め込まれていますか?