【第155話】“税金”を支払う意識が企業を成長させる!?

「納税資金が必要だから銀行に借入をお願いしたんだよ」と、高収益を実現している某社長。経営者にとって“税金”は頭の痛い問題です。納税は憲法レベルのお約束事ですから、義務として然るべく務めていかなければなりません。

 

一方で、経営者の気持ちとしては「これだけ汗水流して苦労して、リスク覚悟の投資で、やっと稼ぎ出した利益なのに、そこからガッポリと持っていかれると…」と悲しくなってきたりします。その資金があったら、あんなことも、こんなことも、もっとやれるのに…、やりたいことが先送りになる悔しさもにじみます。

 

経営とは人間の営み。経営者は教科書でいわれるような道理だけでは説明しきれない心情と戦いながら、日々、成長を目指しています。

 

成長と一言でいっても、売上高、総資産、事業の数、従業員数…、経営者や営むビジネスによって、少しずつ成長をとらえる軸が違うものです。いずれに軸があるにせよ、企業を成長させていくことを考えた場合、そのアプローチには大きく二つの道があります。

 

それは、新製品や新サービスの開発、技術の応用による新分野進出といった、いわゆる「内部成長」の道と、M&Aや営業譲受、アライアンスなどで、既にある事業や企業、ノウハウを調達する「外部成長」の道です。

 

内部成長は、自社の能力を高めたり、技術力を養ったり、生産設備を増強したり、販売部隊を増やしたり…、実に泥臭い努力を積み上げていくことでもあります。

 

一方で、M&Aといった外部成長の基本的な考え方は、「既にある能力・技術や事業・企業を“買う”」ため、差益目的で単に売り買いするようなことに対して、世の中が嫌悪感を示したりすることもあります。

 

ですが、外部成長の道が悪いかといえば、そんな単純なことではありません。M&Aといった外部成長手法は「時間を買う」と言われるとおり、事業に必要な能力・機能を短期間で調達することができ、スピードが求められる今の時代に必要な経営手段だということです。

 

内部成長、外部成長、どちらの道を基本としながら成長路線を歩んでいくとしても、実はもう一つ大きくて重要な視点があります。

 

それは、「投資資金をどうやって調達しているか」ということです。もう少し補足すれば、どういった考え方で資金調達を行っているかという資本政策、投資資金をどこから引き当てているかという調達と運用の問題です。

 

資金調達で難しくて時間がかかる道は、利益を内部留保として積み上げていくことです。反対に最も簡単で時間がかからない道は銀行からの借金です。

 

スピードという面でこれらの組み合わせを考えれば、「内部成長を内部留保で」が遅く、「外部成長を借金で」が早いといえます。

 

どちらが正しいか正しくないかといった議論はさて置いて、企業の真の成長という視点で考えるならば「内部成長の道で得た利益を再投資することで、拡大再生産の道を歩んでいくこと」が、古くても新しい成長の王道といえます。

 

当然のことですが、他人の力を借りずに企業内部に資金を増やそうとすれば、本質的な方法は「税引き後利益」しかありません。ですから、その王道を歩もうとすることは、利益を出して、そこから税金を支払って、その残りを内部留保して…、常に“税金”を支払う意識と直結します。

 

“税金”を支払うのを避けようとすれば、利益を出さないようにと考えます。でも売上は拡大したいとなれば、どうなるでしょうか。借金で設備投資して利益を出さないようにしながら減価償却費で元本返済…。これでは売上に対して借金が膨らむばかりで、借金で売上を買っているといわれても仕方ありません。

 

企業の豊かな成長の起点は常に「高収益」です。まずは小さくても高収益が実現できれば、後に続く再投資から得られる利益は複利で大きくなっていきます。

 

事業経営には、出資してもらったり、借り入れしたり…、外部調達が欠かせないことも事実です。ですがそれを重々承知した上で、資本政策の中心には「利益を出して“税金”を払う」ことをつうじて貯めた内部留保、内部調達に軸足を置こうとする気持ちが大切です。

 

“税金”を恐れず高収益を目指していますか?

資本政策は内部調達に意識を置いていますか?

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