【第124話】経営を高めていく社長に共通する「胆力」の正体
経営者の間では、よく「胆力」という言葉を耳にします。創業者や大きく事業を伸ばされている経営者方は、確かに共通して持っているモノを感じます。
それが「胆力」なのかもしれません。では、これは一体どのように発揮されているのでしょうか。
まず、確実にいえることは、浮き沈み、栄枯盛衰の激しい経営の世界で、単純に順風満帆で経営を伸ばしている方などいないということです。つまり、幾多の“窮地”を抜けてきているのです。
そして、この窮地をどのようにして抜けようとするか……。これこそが、「胆力」の正体のようです。
現在、経営を急伸されているポジティブ思考のとある社長でさえも、新事業への投資にあたっては「怖い」と仰っていました。
1年経たずに売上を倍増させ、地域一番を達成した後継者である若夫婦も、初めてお会いした時には、「将来が不安でたまらない」と仰っていました。
仮に、窮地まで陥らなかったとしても、経営という不確実性の世界を生きていれば、ある種の恐怖感を覚えるものです。
ですが、経営を伸ばされている社長は、しっかりとこの恐怖感を乗り切っておられます。
経営が行き詰まり恐怖を感じた瞬間、多くの社長が震え上がって身動きが取れなくなってしまいます。そして、大抵の場合、自分より強い誰かに助けを求めようとします。
一方、恐怖感を超えていく社長は違います。自分で何とかしようと考えます。自分たちで何とかしようと考えて、経営の原点に立ち戻ります。その原点とは、自分たちが生きていくためには、仕事そのもの、売上・利益を創っていく以外に道はないのだということです。
つまり、感じた恐怖感に怯むことなく、それを仕事創り、お客様創りのパワーに転換しているのです。
とある尊敬申し上げている社長は「厳しくなった時こそ、お客様への“ご提案”が浮かんでくる」と仰います。
お客様に「当社は厳しいのでこれを買ってください」などと言ってしまえば、信用はガタ落ちですし、その瞬間に未来は潰えてしまうでしょう。
恐怖感を超えていくためには、今できることを何とかお客様の“欲しい”に転換して、売っていく以外に道はないのです。
恐怖を感じた時に、仕事を創ろうとするか、貰おうとするか……。
考えようとするか、探そうとするか……。
動こうとするか、固まってしまうか……。
前者と後者、この行動の結果から生まれてくる売上・利益が、似て非なるモノであることについて、特段の説明は不要でしょう。
これこそが「胆力」の正体です。つまり「胆力」とは、恐怖を感じる局面にどう向かっていくかという基本思想、経営の恐怖を感じた瞬間に、それをパワーに変えて、新たな仕事、新たな顧客、新たな売上・利益……を創っていくことに対する思考パターンといえます。
事業家が事業家たる所以は、仕事そのものを創っているということです。決して貰おうとしているのではありません。
この「胆力」を発揮するための前提が、やり切ることに対する覚悟です。とりあえずやってみる……という考えが良い結果を生まないのは、このためです。
いつでも引き返せる……などと思っていては、本来手に入るはずのコトも手に入らなくなってしまいます。走り出したら走り切ることだけに集中すべきです。どうせ退路でさえ、自分で作らなければならないのですから。
絶対に売上・利益を創るという覚悟はできていますか?
あなたの「胆力」は仕事を創ることに向かっていますか?