【第125話】経営を伸ばす「借金」の心得

 

「設備投資って、どのくらいまで許容されるものなのでしょうか?」といったご相談をお受けすることがあります。どんな商売でも成長発展を描いていくためには“投資”が不可欠です。

 

そういったご質問には「いくらやっていただいても結構です。条件はありますが。」と、お伝えしています。

 

設備投資などの大規模な投資となれば、その資金をどうやって調達するかというお話と一対です。もし、その投資資金が、お手持ちの資金や自己資金であれば、ご自分のものなのですからご自由にお使いになればよろしいでしょう。

 

しかし、大抵の場合、銀行からの借入が主たる資金調達法になります。そうであれば、他人のお金を借りるわけですから、自社なりの「借金」に対する方針や考え方をしっかりと持っておかなければなりません。

 

本来、投資資金の原資は、何といってもこれまでに自身で稼ぎ出してきた利益や過去投資から生まれる減価償却費、すなわち自己金融(セルフファイナンス)が基本です。これまでに稼ぎ出してきた資金を再投資するという拡大再生産のプロセスを経ながら、指数的に事業を拡大していく……、というのが最も望ましい成長の姿です。

 

これは自ずと「自己資本」比率が高い経営ということで、安全・保守的な経営です。これは、借入などの「他人資本」が少ないということでもあり、資金面から見て経営の「独立自尊性」を保つこともできます。

 

ですが、手元にお金を貯めるまでにはどうしても時間がかかってしまいます。そうなると、初期投資が大きい事業への進出が難しく、経営者は結構な高齢になってしまうかもしれません。

 

せっかくの事業アイティアが日の目を見ることなく消えていくのは勿体ない。そこで、「借金」の出番です。「借金」の活用は、未来の収入を先に手に入れて、後から支払っていくことで、自己資本の何倍もの大きさの事業を開始することができることになります。

 

自己資本を元手に借入を行い事業を行う考え方を、「財務レバレッジ」と呼びます。財務レバレッジ=総資本/自己資本。つまり、自己資本の何倍の規模で事業を行っているか、自己資本に何倍のテコ(レバレッジ)を効かせているかということです。

 

財務レバレッジが高い……ということは、少ない資本で大きな事業をやっているということで資本効率が高いという反面、自己資本比率が低いということで倒産リスクが高い経営です。

 

日本企業の多くは「借金」を活用してきました。これは、支払利息の節税効果に加えて、資産インフレが進む下では最適な打ち手だと考えられてきたからです。ですが昨今、金利は低いし、まだデフレ気味?という経営環境下であれば、「借金」の意味は薄れています。

 

では、「借金」してまで投資する意義は……と問われれば、それは、事業活動を通じてしか得ることのできない「能力の獲得・向上」です。

 

事業活動という最前線での活動が、能力を高めながら、人材を育てます。投資が「強み」の獲得・向上につながっていることが、「借金」活用に新たな意味を与えます。

 

貸借対照表には載りませんが、「借金」の返済後には確固たる“強さ”が手元に残ることになります。本業・本道を歩むためであるならば、「借金」にも意義が生まれてくるのです。

 

ですがあくまでも、自己金融がファーストベストで、「借金」はセカンドベストです。

 

「借金」しないで事業を開始するよりも、「借金」して事業を開始する方が簡単です。ですから、いつも「借金」で事業を開始する“癖”がついてしまった経営者というのは、「借金」しないで事業を開始する方法を考えることがなくなってしまいます。

 

「借金を増やしながら事業を大きくしていくのが経営だ」「借金は経営者の勲章である」「借金は信用の証だ」……といった古い妄想にはキッパリと別れを告げて、もう一度、初期投資を抑えて先に儲けて再投資、自己金融意識を高めておくことが大切です。

 

「借金」は本業のためだけに限っていますか?

自己金融意識が眠ってしまっていませんか?

 

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