【第100話】新事業投資で目指すのはOnly1かNo.1か?
「この方法、他に誰もやっていないんです。いかがでしょうか?」という文脈で、新事業のご相談をお受けすることが数多くあります。
こういったご相談は、実に面白い着想があったり、技術的に興味深いと感じる要素があったりと、頑張っておられるな~と思いながら、どう売っていくか、誰に売っていくか。。。事業化に向けた今後の進め方が頭を巡ります。
そして、考えておられる今後の進め方をお聞きし、大筋で外していないとなれば、ご相談は更に具体的なレベルへと進み、様々な検討事を決めていく感が出てきます。
一方で、一見、魅力的なお話に聞こえつつも、事業性・収益性は。。。というと、残念ながら見出しにくい場合もあります。
こういった場合、具体的な検討事を決めていくのはなかなか難しく、現状整理、ここに至った経緯、なぜそう考えたのかといったことに立ち戻って整理しながら、お話をお聞きしていくことになります。
なぜならば、ここに至った理由を知ることができなければ、この状況を共有できないからです。
多くの事業が、綿密な市場調査というよりも直感によって着想されています。直感というのは実は言いすぎで、新事業をやると決めて常にアンテナを立てていたことで、それに響いてネタが見つかったというのが多くの実態でしょう。
経営者の感覚というのは、相当に磨かれていますので、直感を否定するつもりなど毛頭ありません。
むしろ、自社の歴史や文化に照らして、直感的に行けると思えるものを突き詰めて、事業として成立される水準まで磨き上げることをお勧めしています。
こういった場面を数多く経験する中で、行けそうか、行けなそうかの違いを生むのは一体何なのかと考えていくと、ある発想の「違い」に気が付きます。
行けそうだと思えるプランの場合、これまでには無かった価値軸で、新しい勝てる領域を生み出しています。
ロボット型掃除機は、自動床掃除という領域では従来型掃除機に優っています。これにより、家庭では「掃除機二台持ち」という新たな市場が生まれた訳です。
新事業を本気で成功させようと考えるとき、その新事業が勝てる、すなわちNo.1を取れる新機軸となる着想を見出して、市場を仕切り直すことが欠かせません。
唯一無二であることは目指すべき姿ではあるのですが、そこに含まれる二つのニュアンス、すなわち、Only1とNo.1という発想の違いが、収益性を分かつのです。
新たに切り出した特定の領域・市場において勝てる、すなわちNo.1を目指すことが、行けるかどうかの決定的な判断基準になります。
ですから、新事業の販売戦略とは、新たに切り出した市場領域で新しい価値軸に乗っかってみませんか?という提案行為になるのです。
他にないこと、つまりOnly1に由来する唯一無二は、必ずしもお客様の欲しいを喚起できるとは限りません。
この辺に焼鳥屋が無いという発想で「地域No.1の焼鳥屋」という看板を掲げたお店に来店意義を見いだせますか、ということです。
Only1に由来するNo.1は必ずしも買う理由にはなり得ないのです。
この加工はあの会社しかできない。。。といったOnly1の正体は、実はその加工市場という領域におけるNo.1だということです。
No.1を目指すからこそ、他に追随を許さないという意味でOnly1になるのであって、だからこそニッチであってもNo.1を獲れる事業領域を開発することを目指しているのです。
御社の新事業は本気でNo.1を目指していますか?
そのために勝てる新市場創りを目指していますか?