【第18話】サイコロ経営に陥らないための秘訣
「宮口さん、〇〇事業を始めたいと思っているのですが…」、「〇〇という新商品の開発を進めていきたいと考えているのですが…」というご相談をお受けします。しかし、同じように聞こえるフレーズであっても背景にある事情や考察の深さは千差万別です。
新事業や新商品とまではいかなくても、次の営業先、次の業務改善、次の設備修繕、次の借入返済。。。見据えている期間の長短はあれど、次なる打ち手をいつも考えていかなければならないのが経営者の日常です。事業の大きい小さいに関わらず事業経営を継続していくことの大変さは痛いほど良く分かります。
“好奇心”は企業経営者にとって大切な資質です。事業家は世の中をチャンスに溢れる世界と見ている方が多く、好奇心は経営者のアンテナの高さ、と言えるでしょう。
ところが、好奇心だけで儲かる事業が立ち上げられるほど、この世は簡単ではありません。聞きかじりで他社のモノマネ事業を展開したところで張りぼての事業にしかならず、行き詰まりは時間の問題でしかありません。
なぜそう言い切れるのか。当たるかもしれないではないか、走りながら考える事が重要ではないか。。。といったご意見が聞こえてきそうです。
しかし、ご相談をお受けした時点で、聞きかじりのモノマネか、しっかりと筋トレを積んだ本物かは大方見当が付きます。その着眼を売れるカタチに仕上げ、しっかりと儲けを生み出していく仕組みとして軌道に乗せられるかどうか。。。
それは、土台があるかどうかで直ぐに推察できてしまいます。市場性云々も大切ですが、最終的にはその市場を開拓突破できる自力があるかどうかが勝負の分かれ目になるからです。
事業を成長軌道に乗せている経営者の方々には共通点があります。階段を上るがごとく、今を極める事の重要性を踏まえた上で次の一手を考えています。すなわち、好奇心の前に“探究心”があるのです。
この探究心の結果、事業を展開する上で土台となる独自の組織能力を育てています。ですから、弊社にお声がけいただくタイミングというのは何とも機が熟し「打てば響くようなタイミング」になるのです。
一方、経営が軌道に乗らず、あの手この手と渡り歩いている経営者の方は、事業を方法論レベルで捉えているので、自社の能力の醸成に対して意識が低いという共通点があります。
これでは、自身の能力向上無しに他者が苦労して創り上げた手法を借りて商売しようとしている、と言わざるを得ません。いつまでたっても自信は付きませんし、自社の事業を誇りに思うことなどないでしょう。
好奇心が旺盛なのは非常に良いことですが、あれはどうだ、これはどうだと、まるでサイコロを振るかのようにあの手この手を決めている状況を、私は「サイコロ経営」と呼んでいます。
他人の作った手法が書き込まれたサイコロを振って、それをやってみて、どんな結果が出るかは仕上がり次第のお楽しみ。。。極めて他力な事業運営です。
こういった経営者の方は、既に誰かが取り組んで表面化した見える所だけにしか意識が及んでいないのです。商品やサービスというのは、その組織の思いや能力の表現型。学ぶべきはその企業が抱いている思いや、商品・サービスを具現化するために費やした能力獲得への努力なのです。
では事業を上手く成長させている経営者はどうでしょうか。それは、サイコロ自体を自分で作っているということです。そうすれば、自らが刻んだどれかの事象が、目の前に実現することになります。これが事業計画であり勝算です。
自らの未来を自ら刻もうと意図することで、つながりのある一筋の道を刻むことができます。その軌跡こそが成長の証になるという訳です。他人の作ったサイコロをどれだけ振っても、毎回、ランダムな“点”が現れるだけ。決して“線”にはならず、自社独自の道は描けません。
他人が作ったやり方を思い付きで真似して、結果を天に任せるか。望む結果を出すために自ら考え、やり方を企てるか。点の経営と線の経営、一手一手の差は小さく見えても、時間の経過とともにその差は大きく果てしないものになっていきます。
今一度、折角のその取組がサイコロ経営に陥っていないか、腹積もりを確認してみてはいかがでしょうか。
御社はサイコロを振るように打ち手を決めてしまっていませんか? 打ち手そのものを創り上げていますか?