【第415話】成功への情熱の実務

「やはりそこまでやらないとダメですか、なかなか難しいかもしれません…」と専務殿の顔が曇ります。

 

新分野に進出したいとのご意向でお声がけいただきましたが、その心は今できることの範囲で何か新しい受注はできないか…というものでした。

 

今のまま踏ん張るのも、成長を目指すのも、いずれも同じく大変なのですから、そうであれば成長を目指しませんか…とお伝えしました。

 

こちらの企業、ここまで聞けばどこかの冴えない企業…とお感じかもしれませんが、そうではありません。とある業界のご重鎮的な老舗企業、素晴らしい技術もお持ちです。

 

しかし、永い安定経営の中でじわじわと経営の情熱が冷め、気が付いたら…という状態です。こうした業歴で相当の実力をお持ちですから、弊社からお伝えしたことについてもすぐに理解いただくことができているのです。

 

さらに、技術開発、人材育成、開発投資…といったことについても、現実感を持ってそれらの難しさ、大変さを理解されているという意味で、素晴らしい経営者なのです。

 

経営には温度感があります。企業を訪問すればそれはすぐに分かります。

 

ここで温度感とは、ワクワク、熱い、挑戦…といった、チャラくて薄っぺらなことではありません。

 

さながら温度感とは厳しさのことです。この厳しさとは、仕事として求められる難易度と言い換えられることです。

 

企業の成長には二つの道があります。それは「今のまま拡げる道」と「もっと難易度を登る道」です。いわば目指す方向が横なのか上なのか…の違いがあります。

 

大切なことなのでもう少し補足すれば、仕事の難易度を現わす代替指標に「従業員一人当り売上高」があります。

 

この「従業員一人当り売上高」は生産性の指標であり、大抵の場合、簡単な仕事ほど低く、難易度が上がるに従って高くなります。

 

もう既にお気づきのことと思いますが、成長への情熱の持ち方が大切です。情熱の持ち方は横ではなく上です。その目標値が「従業員一人当り売上高 2千万円以上」です。

 

こうした生産性レベルまでまず登ろうとすることが大切です。そのためには、考えて、鍛えて、苦労して…が不可欠であり、こうした思考的努力こそが本物の情熱であり経営の温度感として現れてくることです。

 

生産性の向上を生むのは創意工夫です。創意工夫とは考えることであり、これはとても苦しいことです。

 

実際、温度感の高い企業では、経営者のみならず従業員同士でも、こうした登ることに対する相互成長の意識を共有されています。

 

事業の運営にあたって、行動量、行動的努力も欠かせません。ただし、経営者であるならば考えることが仕事ですから、行動も「考えるための行動量」になっていることが大切です。

 

そして「考える」ことの意義目的とは、生産性を向上させ従業員の労働に報いること、生産性を上げようとすることで進歩発展に寄与すること、こうして世の中への貢献を最大化すること…といえるでしょう。

 

今の難易度、あるいは誰にでもできるような難易度の仕事を仲良しで横展開するような経営施策というのは、決して本物の挑戦などではありません。

 

最後に、前述の企業、専務殿はどんな舵取りをされたでしょうか。「私が社長になって、新体制の下、新分野進出を目指します」と腹をくくって下さいました。

 

覚悟さえできてしまえば、目指しさえすれば、小さな一歩を踏み出してしまえば、あとは何とかしようはあるものです。

 

生産性で情熱度を測っていますか?

横への大きな飛躍よりも上への小さな一歩で歩みを進めませんか?

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