【第386話】新事業立上げを転職活動に終わらせないための基本戦略

「衰退産業ですから、この際、全く違う分野も視野に入れて新分野進出を考えていまして…」と社長。会議室には役員メンバーと後継予定の息子さんがズラッと並ばれています。

 

いわゆる業種や業態の転換という大きな舵取り、賭けレベルの新分野進出です。

 

まさに挑戦といえる素晴らしい取組みであり、是非とも成功させていただきたいと切に願います。

 

こうした際、まず大切なことは、業種や業態を変更することが目的化するのは、間違いだということです。

 

例えば、一口に製造業といっても、金属加工と食品製造では、その核となる技術が全く違います。さらに言えば、金属加工であっても、板金溶接と鋳物でもその仕事の根本は異なります。

 

あるいは、宿泊業といっても、ビジネスホテルと湯治場では、価値提供の根本が違います。

 

大抵の場合、取り扱っている製品サービスや提供方法で業種業態が語られます。ただし、これまでとは違う業種業態に…ということ自体が目的化するというのは、むしろ間違いだということです。

 

では…ということで、こうした際、勝算を高めるために大切なことをお伝えしています。

 

それは、現有の能力、技術、知識、知恵…といったことを新分野進出の起点に持つということです。

 

良くも悪くも、好きでも嫌いでも…、本当にゼロからの出発でビジネスを採算に乗せられるほど甘い世界ではありません。

 

ただし、能力を活かすといっても、その活かし方には大きく二つのパターンがあります。それは、新しい仕事を創ろうとするのか、貰おうとするのか…の違いです。

 

多くの場合、今の能力を活かして何とか他で稼げないか…と考えてしまいがちです。このため、「現有能力で、できる新しい仕事はないか」というのが新分野進出、新事業構築の根底にあったりします。

 

これを言い換えるならば、新分野進出という発展的な名目の下で、「何か新しい仕事を貰えないか」という想いが潜んでいるとうことです。

 

当然のことながら、これは新分野進出でも新事業構築でもありません。これは、単なる「新たな取引先の開拓」でしかないということです。

 

もっと言ってしまえば、今の能力で出来る仕事を紹介して…と言っているに等しいということです。同じ仕事で高い時給…どこかに無い、と言っています。

 

こうした考え方は、労働力そのもの、能力技術、それ自体を売りモノと考えているとう点で、発想が労働者的、サラリーマン的です。

 

その意味で、こうした新分野進出、新事業構築というのは、「転職活動」と呼んだ方がいいでしょう。

 

もう一つの能力の活かし方とは、現有能力・技術を起点に新たな“応用”を考えることです。これこそが、新分野進出、新事業構築として考えるべき筋、思考法というものです。

 

そもそも論として、経営者とは、仕事を創る人のことです。新分野、新事業…どこかにある仕事を貰ってくるための口実や請け方を考えようというものではないはずです。

 

ビジネスの面白さ、難しさの本質とは、能力の高さだけで勝負が決まるのではないという点です。持てる能力技術を、お客様のためにどのように“応用”するのか…というのが付加価値の本質だということです。

 

持てる能力、技術、知識、知恵…といったことを応用して、お客様に新たな価値提案を目指す。その結果、業種や業態が変わったように見える…ということに他なりません。

 

業種や業態といった言葉の括りを変えること自体は、取るに足らないことです。そうした枠組みよりも、新たな付加価値の提案、能力技術の応用を考える意識が大切です。

 

能力技術という起点を持ってその応用を考えようとしていますか?

新たな仕事を、貰おうとせず創ろうとしていますか?

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