【第369話】販売がイベント化している際の修正法
「そういうことだったんですね。どうりで販売が積み上がらない訳です」と社長。特長ある自社看板のオリジナル商品を作っておられましたが、その売れ行きがあまり芳しくなく、在庫を抱えておられました。
まずはご安心ください。すぐさま抱えた在庫の販売に着手し、何とか在庫は売れました。そして、現在はweb直販を中心に、ご自身で販売を積み上げておられます。
ちなみに、こうした状況に決して手をこまねいていたわけではありません。声のかかったイベントなどには積極的に出展して、社長自ら出向いて販売に努めておられました。
こうした販売努力というのは、とても大切なことです。お客様の顔色を直接見ることができますし、その声を聞くこともできます。
ただし、イベント的な販売というのは、経営という視点から見て極めて重大な欠点があります。
それは、採算性です。イベント販売がマーケティング調査という“コスト”活動になってしまっていませんかということです。
大切な点なのでもう少し補足すると、社長、経営者…であるならば、自社の活動に対して、やや長い目で見て採算の目論見を持っていることが欠かせないということです。
さらに補足すれば、これはコストを抑えようと言っているのではありません。むしろ積極的に投資をして、その投資に対してリターン、採算を目論む意識の大切さをお伝えしています。
実際、優良企業は“販売”を企画し、不振企業は“イベント”を企画する傾向が見られます。
なぜ、真正面から“販売”に取り組んでいるつもりで、その取り組みが単発の“イベント”になってしまうのでしょうか?
このことは、営業販売強化の根本に係ることです。
まず問題の一番の根っ子は、「良いモノなので、知ってもらえれば売れるはず」と考えていることです。
これは逆から言えば、商品は100%完成しているのに知られていないから売れていないと考えているということです。
ここで問題の根っ子が深いのは、新商品が「確かに良いモノ」と言う場合です。
それならば、知ってもらえれば売れそう…でもありますが、商品が本質的に良いモノであることと、それをしっかりとお客様に説明できることとの間には、極めて大きな隔たりがあるのです。
このため、努力が商品を作るところまでで、それを説明するところまで至らないのです。このことに想いが至ったならば、物事はしっかりと次なるステージに向かって動き始めます。
御社の渾身のその新商品をお客様に説明するのは、それを販売してくれる流通販売業の方々ではありません。それを作ったあなた方の仕事なのです。
商品が物理的にも法的にも完成していることはスタートラインでしかありません。ご自身で売ろうとすれば、説明しようとするはずなのです。誰かに売ってもらおうとするから、最後の最後、準備が足りなくなるのです。
その違いは販売に対する主体性から生まれます。イベントに集客する努力姿勢があるならば、自ら販売してしまった方がいいに決まっています。
他者に頼ろうとする姿勢が販売をイベント化しています。意識が販売そのものに向いていないため、その手段である販売活動への参加が目的化してしまい、イベント化してしまうのです。
商品が物理的に出来上がることと同時に、ビジネスとして大切なのは、そのセールストークの一定の完成です。
商品の完成と同時に、自らが売る意識で説明資料の完成を目指すことが大切です。いい商品を作るまでに留まることなく、しっかりと説明できるところまでが御社の仕事なのです。
御社の渾身の新商品、お客様への説明が準備されていますか?
他者に頼らず自分で売ろうとしていますか?