【第328話】独自路線の成長発展を歩む情報化時代のプル型営業術
「また、新たなお引合をいただきました」と嬉しいご連絡です。とある企業の新分野進出が大きく離陸しています。お客様がまた次のお客様を呼ぶ好循環が回り始めています。
ここで、あえて“大きく”とお伝えしているのは、その販売拡大が一過性のものではなくて、背景には準備した構造的な仕組みがあり、それが回り始めているが故に、今後更に大きく積み上がっていくことがカラフルに見えているからです。
このデジタル時代、ネット時代、SNS時代に、「情報化時代」などと言うとやや古そうに聞こえるかもしれません。
しかし、デジタル、ネット、SNSが道具なのに対して、情報とはその中身を意味しており、どのような媒体を使おうと、その中身こそが重要だということはいつの時代も真理です。
ですから、ビジネスの発展を目指すならば、デジタル、ネット、SNSといった道具活用の意識よりも、情報という中身を作り込む意識が大切です。
このため、実務的には、販売を拡大していこうとする際、商売や顧客特性に応じて、こういったデジタルツールだけでなく、昔ながらのチラシ、パンフレット、提案書といったアナログツールも用いていくことが欠かせません。
ところで、「マーケティングの理想は、販売を不要にすることである」という有名な言葉があります。これは、マーケティングとは顧客理解を起点として、その顧客理解に基づいて新製品・サービスを考えることで、自然と売れていくようにする…といったことです。
確かに、経営の本質を突いた素晴らしい格言といえますが、さすがと思うのは“理想は…”と書かれていることです。
これを逆から読めば、我々は常に理想とする状態を目指す途中にいるため、もっと考えて新製品・サービスの企画開発をしなければならないし、もっと分かりやすいような販売活動もしなければならないと言っているに等しいということです。
さらに面白いのは、この「販売を不要にする」ということについて、どのようなビジネスを行っているかによって、経営者には全く異なる意識が存在することです。
それは、「販売を不要にする」を、作るビジネスの経営者は「他社にできないモノを作る」と理解し、売るビジネスの経営者は「売れるモノを売る」と考えるということです。
この結果、どういったことになるか、どういった情報発信になるのか…。
作るビジネスの経営者は、新商品・サービスは良いモノだから買えと只々叫び、売るビジネスの経営者は、売れてるんだから買えと只々叫ぶということが起こります。
このように「販売を不要にする」という理想が、実態的には、顧客理解が不足したままお客様を「押しまくる」ようなプッシュ型の情報発信になってしまうという現実があります。
情報化の時代、お客様はご自分で調べることができます。お客様ご自身で判断したいと考えておられます。
そのお客様意識に立てば、こちら側が準備すべきは、お客様にご判断いただくための情報発信であり、販売とはお客様側から手を挙げて頂くプル型の情報発信になるはずです。
このプル型情報発信のスタンスが優れている点は、このスタンスから自社の商品サービス、生産体制や販売方法を見直していくことで、一貫性の整った強い事業モデルが構築されることです。
デジタルかアナログか…といった道具レベルの議論ではなく、自社のビジネスを“情報化”してお客様に欲しいと手を挙げていただくための準備をしているのか。この際の「作る」と「売る」の統合プロセスが、御社独自のビジネスを生み出します。
情報化時代の情報発信とは、どんなツールを使うかの前に、どんな情報を発信するかという極めて根源的なことです。決して、耳障りが良い言葉や、単にデザインがキレイ…といったことではありません。
自社のビジネスをお客様に伝わる情報として整えることができること。これが今、「情報化時代」に求められている経営者の情報リテラシーなのです。
お客様に欲しいと手を挙げて頂く情報発信になっていますか?
押さずに引く情報発信になっていますか?