【第327話】常識を超えて事業モデルの構造改革を進める法

「〇〇ビジネスを辞めて××に変えることにしました。そしてもう二つ、新事業のプロジェクトを走らせています」と某社長。

 

いまだ世の中が不安定な中、次なる打ち手を粛々と、大きな決断と挑戦を進められている姿に、心から頭の下がる想いがします。

 

そしてこちらの社長、素晴らしいのは、小手先の改革、作り方や売り方…といった手段レベルにとどまらず、新しい事業モデルの構築を目指されていることです。

 

これはいわば、経営の構造レベルの改革であり、建物でいえば、基礎、屋根、柱といった構造部の立て直し、これまでにない設計に生まれ変わることを目指されています。

 

ではビジネスにおいて、こういった構造改革というのは、どういったものなのでしょうか。

 

まず、次の成長ステージを目指して事業経営の構造改革に取り組もうとする際、その入り口に立つために大切なこととしてお伝えしていることがあります。

 

それは、製造業、建設業、卸売業、小売業、飲食業、旅館業、サービス業…、こういったいわゆる業種という概念を捨てることです。

 

実際、独自路線の成長を遂げているとある企業は、いわゆる製造業でありながら自社をサービス業と位置付けています。

 

大切なことなので補足すれば、全てのビジネスはお客様へのサービスであり、売上はその対価であるということです。

 

このような視点に立てば、自社はどういったサービスでお客様に価値を提供しているのかということに思い至ります。

 

つまり、自社のビジネスを構造的に変革しようとするならば、自社がお客様に提供している価値を軸にビジネスを更新して説明できなければならないのです。

 

例えば、自社をヘッドフォンメーカーと考えるのか、あるいはサウンドエンジニアリングと考えるのかで、お客様への訴求の仕方、今後のビジネス展開は全く違うものになっていくということです。

 

この「全く違うものになっていく」ための下準備こそが、構造改革の本質です。もうお感じのことと思いますが、事業経営において構造改革レベルで打ち手を考えるとは、新たな価値軸で事業の定義を更新していくことです。

 

これは逆から言えば、こちら側がやりたい事業を、お客様側の視点から定義し直していくことでもあります。よって、“ヘッドホン”ではなくて“サウンド”なのです。

 

ところが、このように価値軸で事業の定義を更新していくというのはとても難しいことです。

 

その理由は、とても単純です。“価値”とは、目に見えない尺度だからです。そして、この目に見えないことを言葉にしなければならないからです。

 

さらに言えば、その難しさの根底には、自社の技術能力を売りモノにするのではなく、その技術を価値提供の手段に「成り下がらせる」ことが必要になるからです。

 

このことは例えば、保温性の高い「ポット」を、お客様価値から「おいしい温度」と説明しなければならないということです。よって、自社の保温技術が、お客様にとって一手段に過ぎない…という自己否定にも似た感情を超えていかなければなりません。

 

簡単そうにも聞こえますが、これが難しいのです。特に、下請け的に仕事をしてきた企業ほど自社の技術能力を直接的に売ってきたためにこの自己否定感が強く現れ、僕たちはこの技術で食べてきた…と、構造改革にブレーキをかけるのです。

 

その技術能力は素晴らしいものです。ただし、ビジネスという視点から構造改革を考えるならば、その技術能力をお客様のためにどう使うのかが問われているということす。

 

技術能力をそのまま売って下請けに甘んじるのか。あるいは、その技術能力をお客様のために価値化して独自路線の成長を歩むのか。構造改革は、ある意味で自分の選択次第です。

 

業種にとらわれず価値軸でビジネスを更新していますか?

技術能力をお客様視点で価値に応用しようとしていますか?

コラム更新・お役立ち情報をメールでお知らせします!

メールアドレスをご登録いただくと、コラム更新やコラムではお伝えしきれない情報などをメールでお知らせします。

こちらのページから是非ご登録ください。

経営者応援コラム