【第311話】可能性を信じることから始める大逆転の戦略実務

「実は、将来が少し怖くて」、「いゃー、怖いもんですね」といった社長のつぶやきを耳にします。

 

新事業の構想が固まってきていよいよ大きな投資を決めた、あるいは既存事業を焼き直して新たな方向性に切り替えると決めた…。

 

面白いことに、こういった大きな決断後にお見送りいだだくような場面で、社長の意欲みなぎった顔つきとは真逆の言葉が発せられるのです。

 

これはある意味、本気を出したこそのことです。新たな努力に対する結果が楽しみだという武者震いであり、決して腰が引けているのではありません。

 

つまり、この“怖い”は、言葉と裏腹なものであって、新たに手にするものに対する期待と同時に、自分が本気を出したにもかかわらずその結果が伴わなかったら…という感覚。試合前の緊張感と近いかもしれません。

 

こういった新たな事業、新たな方向性に挑むというのは、自らの可能性を信じること、ある意味で賭けることに他なりません。

 

だからこそ、事業経営とは可能性を信じることで発展を実感する“楽しさ”もある一方で、常に可能性が実現しないかもしれないことに対する“怖い”が付きまとうのです。

 

仕事柄、事業の捉え方、いわば入口を変えることで、これまでの劣勢を大逆転してきた経営者を数多く見てきました。

 

ただしこれは、波乱万丈、一発逆転といった博打的なことではなくて、もっと粛々とした戦略的努力の積み上げによるものだということは、言うまでもないかもしれません。

 

当たり前のことですが、世の中には当たる事業と当たらない事業といったことがあるのではなく、大きな時代の潮流の後押しこそあれ、その事業分野で存続発展していくための優れた戦略意識によって実現されています。

 

こう考えるならば、「可能性を信じること」とは戦略上の目標実現にかかわる概念だと分かります。

 

要は、戦略上、高い目標を掲げたからこそ、その結果が「吉と出るか、凶と出るか」、「努力は実るのか」、あるいは「努力が無駄になったら」という恐怖心が芽生えるのです。

 

逆に言えば、出来る範囲で出来ることをやって、それを現金化しているような事業経営であったならば、ここでいう“怖い”といった感情よりも、むしろ今が続くかどうかに対する“不安”に近い感情をお持ちのはずです。

 

そもそも、出来る範囲で出来ることをやる、というのは状況を好転させていくような戦略と呼べるものではありません。

 

見ればすぐにわかりますが、経営計画がやる事リスト、ToDoリスト、になっているからです。優れた経営計画、戦略性とは目指す未来に対する展開シナリオです。

 

これを「独自の勝ち方」と言ってしまうと、勝ち負けの話か…と反感を買ってしまいそうなので少し補足するならば、「自らの可能性に賭けた目標実現シナリオ」ということです。

 

戦略の実現とは、シナリオ展開、時間軸を伴うものです。このため、この間、ひたすらに情熱を注ぎ続けなければなりません。

 

こうした事業経営における情熱とは、とても淡々とした、粛々としたものです。今日、やる気が湧かない…といった日々の感情的なことを超えた心の核心部分です。

 

このため、一大戦略を推し進めていくためには、まずは永く情熱を注げるようにご自身の事業を今一度愛そうとすることから始めることが大切です。

 

だからこそ、市場調査といった儲け話を探すようなことは止めて、自らの事業を愛し、今後の目標とその実現のための展開シナリオを粛々と歩み続けようとする意識が大切です。

 

この際、他人や他社との比較といったことは不要です。そもそも逆転劇とは、みながムリと思っていたところに、「そこ行く?」というオリジナルな情熱からしか生まれないのですから、それに賭けてみるのが吉です。

 

可能性を信じて高い目標を掲げていますか?

実現への戦略は粛々とした展開シナリオになっていますか?

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