【第296話】新製品開発で成功を収める顧客志向の目標設定

「この樹脂成型技術を応用して、新分野へ進出したいんです」とのご説明には、想いあふれるかのように語気が強まります。

 

ご案内いただいた工場内は、省エネ環境配慮から照明はところどころ抜き取られ、労安法の規定ギリギリの明るさといった中で、ややゆとりある配置で生産機械と人が動いています。

 

こういった際、効率的に議論を進めるために、弊社が行っている高収益事業モデル構築セミナーの導入部をお話しするようにしています。

 

この際、大変に面白いことが起こります。それは、社長の顔が「ニヤッ」とするか「青ざめる」かにパックリと二分されることです。

 

ちなみに、「ニヤッ」とされる社長というのは、当然「これ行けそう」とご自身の中で感じていたことが、間違ってなかった、もう行けそうとさえ思えるようなカラフルなイメージになってきたことによるものです。

 

反対に、「青ざめる」社長というのは、今回検討しようとしている新製品のことではなく、自社に決定的に欠けていること、このままやっても勝てそうにない構造的な理由に気付いてしまったことによるものです。

 

なぜ、同じお話をお伝えしているのに、これほどに違う反応が起こるのかといえば、そこには、原因ともいえるほど重大な、あることに対する認識の違いが明らかになったからに他なりません。

 

ところで、製造業であれば何かを造っています。ただし、何を造っているのかという分類で語られがちですが、どう造っているのかということについて、実は多くの経営者にあってもご自身で整理がついていません。

 

例えば、どう造っているのかということとは、ご自身の企業が「請負受託型」で造っているのか、あるいは「価値提案型」で造っているのかの違いです。

 

これは、“造る”がお客様の代わりに行っている領域に留まっているのか、あるいは、一定の範囲で製品設計や仕様決定を担い、お客様の代わりにとどまることなく価値へと転換してお客様にお届けしているのかの違いということです。

 

頭の中が「請負受託型」の経営者の場合、新製品の開発や新分野への進出というのは、仕事の新たな受け口を増やすイメージが強いために、社内に新たな製造設備を入れること程度、請けた仕事を約束の水準で仕上げられる能力獲得レベルが目標になりがちです。

 

一方、「価値提案型」の経営者の場合、そういった能力の獲得を前提に、その能力を使ってお客様に価値を提供しようとする領域が目標になっています。新製品を商売化するために、もう一工夫を目指します。

 

新製品開発、新事業構築、新分野進出…、この際の目標設定の違いは、企業の仕事そのものに対する認識の違いです。新事業を立ち上げて新たな仕事を請けられるようにしようとするのか、あるいは、自社の能力を高めつつお客様に価値で応えようとするのか。

 

どちらも仕事であり、無論、良い悪いといったことではありません。しかし、この目標の置き方の違い、「請負受託型」と「価値提案型」のビジネスとしての根本の違い、取り組み時に掲げる目標設定の違いに気付かずに、開発プロジェクトを進めたらどうなるか…ということです。

 

新製品の完成度について、どう考えているのか。新製品が出来る能力獲得、新製品が形的に出来上がったレベルと考えているのか。あるいは、そこからもう一工夫、付帯サービス、提供方法、納期…といったことまで含めて新製品を価値化しようとしているのか。

 

この完成度と呼ぶ範囲の違い、新製品をラウンチする際の打ち出し高さの違い、新製品開発における目標設定の違い、延いては商売自体に対する経営者の認識の違いが、収益性の差を生み出します。

 

もちろん、新製品完成からもう一工夫という努力投資にリスクは憑き物ですが、歴史的な名経営者がみな「価値提案型」であるということは、このリスクを取らないかぎり名経営とは呼べないことを物語っています。

 

顧客志向で価値開発を目標に設定していますか?

「言われる前に一工夫」の投資リスクを負おうとしていますか?

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