【第297話】企業の成長スタイルと働き方改革が表裏一体である構造的理由

「君の仕事は約束を果たしていない…といったことをスタッフ同士が話し合ってくれるので、そういった意味でマネジメントは楽だ」と海外展開されている技術企業の社長。

 

欧米では、仕事にあたって、その人がやるべきことの詳細が記された職務記述書などがあって、その仕事、タスクに人が割り当てられます。そして、このタスクを果たしたかという成果に対して評価が行われ、いわば成果主義的な思想に基づいて仕事が設計されています。

 

このことは同時にタスクそのものに給与が紐づいており、もっと高い給与が欲しければ、もっと高度なタスクの仕事を自分で取りに行くことが必要であり、このためのスキルアップは自分で…ということでもあります。

 

一方、日本はといえば、部や課単位でザックリとした職務の分掌があるだけで、それを誰がやるか…といったことはほとんど、その場その場で「よろしく」となります。スタッフはこの「よろしく」と任されることを信頼の証と受け止めつつ、これを請けることで経験を積み増して成長していくことになります。

 

このため、評価は「みんなのために頑張っている」といったプロセス主義的なものになりがちです。そして、これまでの経験の蓄積が信頼実績の証ですから、給与は年功序列になりがちです。

 

昨今、一気にテレワーク化が進み、様々なご意見を聞く中で、働き方にもっとも影響を及ぼしそうなのが「仕事のタスク化」です。

 

実際、とある企業のプロマネは「テレワークは、ホント個々人の実力差があからさまになる」といいます。当然のことながら、テレワークによってチームワークがこれまでの「助け合い」から、それぞれが「役割を果たすこと」へと変わっていくことが予想され、今後どうしていけばよいものか、との違和感に経営者は頭を悩ましています。

 

この悩ましさ、チームマネジメントのスタイルをどうすべきか…という目先の課題に意識が行きがちですが、それを考える前に、もっと大切なことを理解しておくことが大切です。

 

企業というのは、すごく乾いた言い方をすれば、人の労働力を現金化する機能を持っています。ただし、この機能には二つの事業フォーマットがあるのです。

 

一つ目は、スタッフの労働力以上の現金を生み出す機能、「付加価値型」です。これによりスタッフはこの企業で働くことで自分の能力以上の給与を手にする可能性が生まれます。

 

この事業フォーマットは高めていくマネジメントですから、働き方としてもノウハウ・経験の社内蓄積を進めるために、長期の雇用が前提となりますし、短期的な成果のみならず長い目での評価、プロセス主義的な視点も大切です。

 

そして、この高めていくマネジメントは、従業員の長期雇用とこれに伴う給与水準の上昇に対応していくために、今よりも難しい付加価値の高い仕事に取り組んでいくことが絶対条件となります。

 

二つ目は、スタッフの労働力そのものを現金化する機能、「労働集約型」です。スタッフは働くことで現金を手にしますが、稼ぎの一部は企業維持の経費として天引きされます。

 

この事業フォーマットは拡げていくマネジメントです。今のタスクを拡めていくことが最優先課題ですから、人の育成よりも増員が重視されますし、働き方としてはタスク志向の成果主義で、夢ある未来を掲げつつ、そこで生まれる格差についてはスタッフ側で承知してもらう仕組みづくりが求められます。

 

どちらの事業フォーマットが良し悪しといったことをここで申し上げるつもりは毛頭ありませんが、資源のない日本で豊かな暮らしを営んでいこうと考えた場合、自ずと明らかな働き方が見えてきます。

 

世界を相手にスタッフみんなの貢献意欲で「付加価値型」の経営を志向していくことが大切であって、狭い日本の中でスタッフ間でおカネの配分を巡って競うことになりがちな「労働集約型」な働き方はどうなのか…というのが、今、困難にあってタスク志向に偏りがちな風潮から経営者が覚える違和感の正体なのです。

 

同時に、この「付加価値型」経営、高める経営にあってスタッフに求められることは、今日より明日、明日より明後日、その成長スピードが遅かったならば、いずれ実力が給与水準と逆転して赤字社員になってしまうということを心しておくことが大切です。

 

労働投入以上の付加価値を生む経営を志向していますか?

その状態をスタッフへ伝えるための数字指標を持っていますか?

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