【第295話】経営者が「職業選択の自由」を活かすための戦略実務

「こんな状況だけど、予定の海外投資を進めています。しかし、為替が…」とのこと。聞けば、驚くほどの生産性、コスト競争力を持つ設備投資で、次なる時代の市場変革に余念がありません。

 

今、経営者は、「これからの一手はどうすれば良いのか」、「この仕事を続けていけるのか」といったこの先について、否応なしに考えざるを得ない状況に迫られています。

 

こういった耐えている時間というのは、自分で考えて決めようとするのか、足がすくんで右に倣えとなってしまうのか、これからを左右する大きな分岐点です。

 

そもそも論として、どんな仕事に就くのか、どんな商売をするのか…というのは自由です。いわゆる、憲法で定められた「職業選択の自由」です。

 

よって、経営者という立場にあるならば、どんな事業をどのようにやろうとも、それは自由なのだ…という原点に立ち返って、時には肩の荷を下ろした気持ちで、気分をリフレッシュしてみるのもよろしいかと思います。

 

これを逆から見れば、自由だからこそ、経営者にはどんな商売をしていくのかという根源的なことについて、その意志が試されているとも言えます。

 

事業計画を考える際、その採算性を事前に評価する、いわゆる事業性評価を行います。ここで、先行投資の回収も含めて投資が採算に合うものなのかを数字的にシミュレーションします。

 

この事業性評価は、新事業のイメージをカラフルにしていくという意味でとても大切なプロセスです。ところが…、そもそもそこら辺に儲かる事業が転がっているはずがないという現実があります。

 

このことを前提とすれば、実務的には、新事業や事業拡大というのは、採算に見合う事業を「探す」というよりは、むしろ「創る」に近いことがお分かりいただけるものと思います。

 

この採算を創るというのは、フツーにやってしまえば投資回収が不能な赤字事業を、創意工夫で採算がとれるレベルに仕上げていくという事業構築の本質部分です。

 

この際、職業選択の自由にあって何をしていくのか…、経営者として自由のスタイルは、大きく2つに分かれます。

 

それは、「自由にやりたいだけの社長」と「自由の中にあってこそ役割を担っていきたい社長」です。

 

自由にやりたいだけの社長は、ご自身の経済的な自由であったり、時間的な自由のために仕事を選びます。

 

これは言い換えるならば、仕事とはご自身の自由を獲得するための手段であって、端的に言えば仕事は「何でもいい」という傾向が見られます。

 

一方、自由の中にあるからこそご自身で考えて選んで社会的な役割を積極的に担っていこうとされる社長もいらっしゃいます。

 

この自由に対する考え方の違いは、困難な状況にあって顕著に現れます。実際、大震災の困難にあって、大きく方向転換をして、見事に新たな存続発展の道を歩まれている企業に共通するのは、このことです。

 

どちらの自由も、一見、それがだめなら他のこと…にも映るのですが、何でも良いということと、たとえ少し違った形であっても、この役割を担っていこうとしようとすることは、経営意識としての根本が違います。

 

経営者として、儲かりそうな「事業を探す」のか、あるいは、能力・技術を活かして次なる「事業を創る」のかということは、経営者としてのリスクの負い方の根本が違うのです。

 

そもそも、採算と役割、このどちらが目的でどちらが手段なのか…、が大切です。

 

どんな役割を担っていくつもりなのか。その役割を持続可能な採算に乗せるための創意工夫と、ここから生じるリスクを負う姿こそ「職業選択の自由」を活かす最強の戦略です。

 

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