【第272話】成長発展のために大切な“こだわり”の持ち方
新分野進出に成功され、その分野で独壇場が見えてきた社長いわく、「やっと研究開発の余力を生めるようになってきました」とのこと。本業での稼ぎが順調に自走する中、次なる打ち手の準備に余念がありません。
仕事柄、新事業や新分野、新商品のご相談をお受けします。また、商品がある程度できあがっていて、その販売拡大についてご相談いただくこともあります。
こういった際、確認のためにお聞きすることがあります。それは、本業とその状態、社長や経営陣の経歴、あるいは現在お持ちの技術や組織能力についてです。
なぜ、こういったことをお聞きするかといえば、それこそが成功要因の核となることだからです。実は、こういった技術能力の獲得というのは大変なことだけに、「なぜこれに取り組んできたのか」という思想的な背景を持っているからです。
よって、こういったことをお聞きすることで価値観的な思想を理解できるため、行けそうな分野や力を発揮しやすい方向性を見定めることができるのです。
新事業ということを考えるのであれば、これまでどうこうに関係なく全く新しい分野への進出を検討すべきではないか…というゼロベース的な議論をお聞きすることがありますが、弊社ではこの考え方に反対の立場です。
こういった議論というのは、金融的な経営を生きる経営者であるならば「アリ」といえることですが、こと実態的な経営を生きる経営者であったならば「ナシ」なのです。
まず、事業経営にとって「新しい」とはお客様にとって何かしら新しいという意味であって、御社にとって未経験という意味ではありません。
例えば、御社が今生きている世界で、それなりの存在感を発揮するような“ど真ん中”を歩んでいたとするならば、「こういったモノができないか」、「○○を作れないか」、「××を受けてくれないか」といったお話が持ち込まれる立場にあるはずなのです。
つまり、こういった立場にあってお客様のご要望にお応えしようとするならば、そもそも論として、常に「新しい」ことに手を付けていかなければならない状況にあるはずなのです。
これを逆から見れば、そのお話が聞こえてこない状況というのは、その分野で負け始めていることであって、まずそこに何かしらテコ入れしなければならない状況といえます。
当然のことながら、ものづくり、エンジニアリング、サービス開発といったことというのは、どこからか買ってきて右から左…という商売ではありません。
これはある意味、技術能力の向上、革新的な開発、深堀の努力が必要なことであって、お客様のご要望に応えるためには、オリジナルな解決策を要する極めて困難なことでもあります。
この困難なことに取り組んでいこうとするならば、売上といった数字だけで意欲が湧くものではありません。新たな事業や商品がもたらす結果的な状態を実現していくことに対して“情熱”を持てるか…といったことが、向き不向き、成功可能性の判断軸となります。
不思議なことに、副業みたいな売上というのは、例え売上になったとしても、なかなか利益を生むものではありません。
これは、お客様から本物と認められていないために、単なる外注の代行的な労働力とみなされていることに起因します。
豊かな成長発展の道とは、売上だけでなく当該分野で存在感を高めていくことです。よって、経営における“こだわり”とは、何かを新たに選ぶことというよりはむしろ選ばないことへの覚悟だということができるのです。
簡単そうにも聞こえますが、これは、自身に制約を課すことでもあります。浅くて細い道を四方八方に張り巡らすような経営ではなくて、深く掘ることで太くなるような道を進んでいく意識が大切です。
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