【第271話】設備投資で後悔しないために不可欠な意識性

「念願の工場を建てて新事業を開始しました」といった意気揚々なお話からしばらくして、「工場は建てたのですが、受注が少なくて…」といった実情をお聞きすることがあります。

 

そういった際、「工場投資はどういった“意図”で行ったのですか?」とお聞きすると、経営者のお考えがどういった意識レベルにあるのかということが伺えます。

 

なぜこういった経営者の“意識”が大切かといえば、今後、状態が改善して浮き上がる可能性が高い状況にあるのか、今後も浮き上がることが難しい状態にあるかが分かるからです。

 

ちなみに、設備への投資というのは、生産能力を獲得したり拡張したり、あるいは、それを効率的に行っていくためのものです。

 

ですから、設備投資の意図は…と問われれば「はあ?」となり、当然のことながら「新製品を作れるように」、「もっと生産量を増やせるように」、「もっと早く」、「コスト効率的に」といったお答えが返ってくることになります。

 

こういったレベルにしか意識のない経営者の営業トークを考えていただければ、それが売れないことは容易にお分かりいただけるものと思います。

 

「〇〇を作ることができます」、「お安く作ることができます」、「納期についても頑張ります」。これを聞いていかがでしょうか。

 

お客様も一先ず足りている状態にあるのです。こういった営業トークで営業されて、「ではお願いします」となることなど期待できません。

 

では、一方、浮き上がる可能性を持っていて、その時を待っているような経営者の意識というのはどういったものでしょうか。

 

「最新の〇〇設備を保有しており金型不要で部品を製造できます」、「試験開発用部品を1つから3日でお届けします」、「金型を準備するのと比べて、初期コストも納期も劇的に抑えることができます」。

 

これらの営業トークは、投資によって獲得した設備能力をお客様のためにどう応用するかという意識レベルで経営にあたっていることがお分かりいただけるものと思います。

 

このため、いずれ「お願いしたい」というお客様やタイミングが到来するであろう状態にあって、継続的な営業開拓の努力さえ怠らなければ、納得の価格で新たな受注を獲得できる可能性が高い状態にあるといえます。

 

「設備さえあればこんなモノが作れる」といった意識レベルで設備投資を実行したならば、それは投資回収に足る商売になる可能性は限りなく低いのです。

 

経済が成長していて、よって、世の中全体として生産能力が足りていないといった環境下にあれば、生産能力自体が売れる可能性はあります。

 

しかし、この足りてる時代、何かができますというだけで、それが例え高度な能力であったとしても、それは既存の設備技術の置き換えでしかなく、仮に売れるとすれば、その理由は「今よりも安い」からなのです。

 

このため、償却が進んだ今の設備でやっている商売に対して、新たな投資分を追加で回収しなければならない状況というのは「既に負けている」のであり、投資回収の勝ち目のない勝負に挑んでいるとしか言いようがないのです。

 

商売とは、組織能力、設備能力の高さだけで何とかなるものではありません。採算を作るとは、その持てる能力をお客様のためにどう応用するかというアイデアによるものです。

 

採算とは、独自のアイデアを起点に、その確からしさを試行しながらチューニングして、独自のノウハウとして育てていくことによって成り立たせていくもののです。

 

投資という名の下、おカネで能力を買っただけの経営者と、新たに獲得する能力をお客様への応用を考えながら試行している経営者とでは、才覚の育ち方が決定的に違ってきます。

 

能力の獲得だけなら外注でもできることです。設備投資を回収できる採算を成り立たせようと願うならば、お客様への応用アイデアを試す意識で実施していくことが大切です。

 

設備能力の応用を構想していますか?

その応用を試行することを通じて商売の才覚を高めていますか?

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