【第270話】しがない経営者とそうでない経営者の根本的な違い

「しがない中小企業の社長ですから…」といったことを耳にすることがあります。多くの場合、「いろいろありますよね」と冗談交じりのことです。

 

しかし、本気でそう思っておられるとしたならば、いち早くその精神状態を抜け出しておくことが大切であることは言うまでもありません。

 

経営者とは素晴らしい仕事であり、そのことに曇りがあったならば、従業員にもお客様にも株主にも本気でモノをいうことができなくなるというものです。

 

しがない…というのは、何らかの「諦め」や「我慢」といったことから生まれてくるものです。そうであるならば、この諦めや我慢が何なのか…、そのことについてご自身で理解し、超えていくことを考えなければなりません。

 

まず「諦め」ですが、さまざまな諦めの中で経営者という立場から考えて最も大きいのは、「何のために働くか」といったことに関する諦めです。

 

若い頃は、世界を、お客様を…と思っていたところ、お客様からお叱りを受けたり、従業員から反骨的な態度を取られたりしているうちに、ある意味で丸くなり、仕事なんてこんなもんだという心理状況に落ち着いていきます。

 

こういった状況の何が悪い…といったご意見が聞こえてきそうですが、これは経営者として極めて危険な状態にあると言わざるを得ません。

 

その理由はとてもシンプルです。この状態は言い換えるならば「食えればいい」ということが働くことの目的になっているからです。

 

このことの本質的な問題は、事業やビジネスがお客様や世の中のためではなくて、自分たちが食うためという極めて利己的な目的意識にあることです。

 

こういった心理状況にあると、例えば、お客様の文句を言うようなことが恒常化します。自分たちの都合のいいようにお客様が動いてくれないという訳です。

 

お聞きになっていてお気づきと思いますが、それはいずれ社風となり、組織を破滅へと導いていくことは明らかです。

 

そして、しがなさにつながる「我慢」もこれに通じるところがあります。食うための我慢は、しがなさにつながります。我慢には種類があるのです。

 

当然のことながら、何かを成し遂げようとするならば、そのための努力が必要であり、その努力とは、「我慢」することでもあります。

 

特に、目標が高いほどその達成に要する努力量や努力期間は長くなるため、「我慢」も大きくなります。

 

ところが、こういった努力が単なる「我慢」でないことは明らかです。それは自らが目指したことに伴う努力的な犠牲であり、自分に課した制約に他ならないからです。

 

例えば、ストイックということを聞いて、どう感じますでしょうか。とても「我慢」が多い状況を連想されるのではないでしょうか。一方で、これを「しがない」とは誰も思わないでしょう。

 

このように、「しがなさ」は、ご自身の目標がない、あるいは目標を下げたことによって生まれています。原因はご自身の外側ではなくて内側にあるのです。

 

経営者である限り、どう居ようといずれ大変なのですから、腹を決めてご自身の目指すことのために、ご自身のやりたいことのために「我慢」する覚悟が大切です。

 

残り時間の限られた経営者人生を実りあるものにするためにも、働く目的を高々と掲げ、そのことに伴う「我慢」を受け入れることで、しがなさとは縁遠い経営者人生を送ることができるようになることでしょう。

 

働くことの目的が下がってきていませんか?

自ら掲げた目的のために自ら「我慢」を選んでいますか?

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