【第223話】社長として大切なステークホルダーへの対応順

「今度の株主総会ではいい報告ができそうです」と仰るのは、新製品の開発で新分野への進出に取り組まれてきた社長。着実に経営を高めていらっしゃいます。

 

社長であれば、従業員やお客様との関係でご苦労が絶えない毎日をお過ごしのことと思いますが、銀行や株主との関係にも気を遣うものです。

 

ところで、株式会社の「株式」は、20世紀最大の発明と言われるほど、今の社会経済を支える重要な役割を担っています。

 

その昔、例えば魚漁に出るとして、思ったほど魚が取れなかったり、あるいは荒波で船が沈んでしまったり…と、仕事にはリスクが憑き物です。そのため、その漁に対して複数の人が出資して、その出資金を元手に船を買って、船長と船員を雇って漁に出ることを考えました。

 

この出資が株式であり、漁から得られた収穫から船長や船員に分け前を渡し、利益を出資額に応じて分配する。そういった仕組みが株式からの配当金で、こういったことが株式会社の原形です。

 

ここでお分かりだと思いますが、出資者は船長に漁を依頼している関係にあるということです。これは一般に「プリンシパル・エージェント関係」と呼ばれるもので、出資者という依頼人(プリンシパル)が船長という代理人(エージェント)に漁という仕事を依頼しているという関係にあります。

 

つまり、法律的な見方をすれば、会社の所有者は株主であり、社長はその株主から依頼を受けた代理人。そして従業員は、その仕事のために雇われているという関係です。

 

いかがでしょうか? これ、感覚的に「そうそう」とすんなり受け入れられるでしょうか。こういった法的な理解は事実ではあるのですが、日々の仕事観からすると、相当な違和感を感じずにはいられません。

 

これは、「株主のために働いている」という事実だけでは、働き手のモチベーションとして何か足りていないことを意味します。しかし、経営者であるならば、依頼人である株主に応えていかなければなりません。

 

実際、社長としては、株主、金融機関、従業員、仕入れ先、お客様…といった関係者の全体に応えていくことが求められています。

 

簡単そうにも聞こえますが、これはなかなか難しいことです。まさに「あちらを立てればこちらが立たず」という関係にあるからです。

 

例えば、お客様のために…と、過剰なサービスを低価格で提供して赤字になって、お客様は喜んでくれたものの、仕入れ先への支払いに窮したり、従業員に賞与のみならず給与でさえ支払えないといったことは困りものです。

 

あるいは、株主のためにと短期的な売上利益に考え方が偏ると、サービスの低下や法令違反や事故となって、いずれ社会問題化するし、ひどい場合には事件になってしまうこともあります。

 

つまり、社長の仕事としては、採算を成り立たせることを前提に、これら関係者の全体に応えていくことが欠かせない訳ですが、実は、これは「バランスをとる」といった言葉で片付けられるほど簡単なことではないのです。

 

では、関係者全体に対して同時に応えてくためにはどうしたら良いのか。そのために大切な“順番”があります。

 

まず初めに大切になのが「従業員」です。従業員がお客様や仕入れ先に応えてこそ商売が成り立つからです。その結果、採算が成り立ち株主に応えることができることにつながるからです。つまり、社長は株主に応えたければ、まず従業員に応えなければならない順番にあるということです。

 

元来、“コスト”とは「費用」や「損金」のことではありません。本来の意味は“犠牲”です。商売の本質は“犠牲”の現金化なのです。誰かの“犠牲”をお客様にご購入いただいて商売が成り立つのです。

 

日々の仕事というのは、コスト、金銭的な尺度だけでは測りきれない“犠牲”の上に成り立っています。ですから、社長はこの“犠牲”を最も負担している順番に労うことが大切です。

 

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