【第224話】新事業の「成功」と「当たる」の根本的な違い

「このビジネスは神様からのプレゼントだと思ってます」と仰るのは、新事業を着実に成長路線に乗せている社長。そういった謙虚な物言いから、見ようによっては「上手い商売を見つけた」、「時流に乗った」といったように見えるかもしれませんが、それは全く違います。

 

むしろそうではなくて、まだ伸びそうにない商売を、しっかりと収益性が成り立つビジネスに仕立て上げたというのが本当のところです。そして、この新事業は、これから10年、20年と発展しながら続いていくことでしょう。

 

もちろん、どのようなビジネスでもそうですが、大きな意味で時流に乗っていることは大切です。これは、ビジネスを成長させていく上で大切なことではありますが、実のところ、経営者は、その時流自体を創り出す側にいるということも忘れてはなりません。

 

実際、前述の社長も事業企画の時点から、世の中に新たな文化を醸成しようという意識レベルで考えておられました。新たな着眼を得るために広く情報収集はされていましたが、それは単に何らかの流行りに乗ろうとするため…といったことではありません。

 

最初から、永く続けていくこと、そして事業を育てていくこと、そういったことを通じて、お客様の幸せ、ライフスタイルの進化、文化的な発展…、といったことを意識されていました。

 

なぜこんなことをくどくどと申し上げているかといえば、それは、新事業を「成功させよう」という意識と、単に「当てにいこう」という意識では、事業構築に対する根本姿勢がまるで違うからです。

 

大切なことなのでもう少し補足すれば、新事業とは何なのかといったことです。単純に「新たな売上」を求めることではありません。ビジネスの特徴や新規性といったことを表面的に考えて「当てにいこう」とする意識から、強いビジネスは絶対に生まれてこないのです。

 

「当てにいこう」とする意識から強いビジネスが生まれないのは、結果を求めるあまりに“話題性”で売ろうとしてしまうからです。考えが浅く、商売の本質にまで思考が及ばないのです。

 

なぜ、そういったことになってしまうかといえば、その根本的な問題は思考パターンにあります。それは、「当てたい」との意識、つまり目先のおカネ欲しさに、売れると分かっている程度のところに便乗してしまうからです。

 

これはいわば、二番煎じ、二匹目のどじょう、濡れ手に粟…。本当に考えるべきことを考えずに、他人の成功に便乗しているにも関わらず、それを悟られまいと「ウチは違う」と言い張るために、ビジネスのウリが極めて稚拙な“話題性”となって現れてくるのです。

 

“話題性”でスタートするビジネスというのは、まあ、こういった商売にも一定数のお客様がいらっしゃるので、ビジネスとしての問題というよりは、むしろ経営者の思考パターンとしての問題といえるでしょう。

 

こういった経営者の思考レベルは、簡単に見分けることができます。独自性社長は「思想」を説明し、話題性社長は「方法」を説明するからです。

 

例えば、お寿司であれば、独自性社長が「江戸前の進化を目指しています」と説明するのに対して、話題性社長は「電車が運んできます」と答えることでしょう。

 

これでお分かりのとおり、“話題性”だけで売ろうとするビジネスの最大の問題は、本質的な価値の部分に意識が及ぶことなく、その表面的な提供方法の違い程度に留まってしまっているため、その商売自体の真の進歩発展に貢献していかないことです。

 

これまでお伝えしてきたことを少しまとめるならば、「ビジネスの起点がおカネだと“話題性”に走りがちになる」ということです。

 

もちろん、ビジネスですから採算を成り立たせて、その利益の再投資で事業を育てていくことは大切ですが、お客様への本質的な提供価値のことを差し置いて、おカネという結果指標から入ってしまうから、ビジネスが“話題性”に偏ってしまうのです。

 

これでは、いつまで経っても本質的にビジネスを興したことにはなりませんし、いつまでも自律的に商売を立ち上げていく力は身に付きません。経営者として本物の成長を歩もうとするならば、その商売の本質レベルで商売を考えることが大切です。

 

永い目で進歩発展を歩んでいますか?

提供方法の話題性ではなく価値的なインパクトを作ろうとしていますか?

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