【第185話】ビジネスのグレードを引き上げる売上創りの絶対条件
新事業の構築にあたり、プロジェクトを進めていく会議室には摩訶不思議な空気が漂います。何というのでしょうか、「未来を変えている」という感覚とでもいうのでしょうか。
果たして、自分たちのこの取り組みは未来をどう変えているのか…。
心逸る気持ちと、ケガをするかもしれない恐怖…、未来は思惑どおりに変わってくれるのか。そのために、今頑張っているんだと分かりながらも、ケガを負うリスクが無くなる訳ではありません。
これを逆から見るならば、これこそがビジネスがビジネスたる所以であり、リスク領域に突っ込んでいない取組みというのは、ビジネスと呼べるようなものではないとさえ言えるでしょう。
ところが、プロジェクトが進むにつれて、そういった成功・失敗といった概念的な両極は現実へと収束し、具体的な売上利益が実現されていきます。
この頃には、あの頃、頭に描いたビジネス像は、今日の製造、販売…、淡々と運営される日常業務へと写像されています。
ここでお伝えしたいのは「あの頃の構想が今日の日常業務になっている」ということです。これは、当然のことでありながら、ビジネスを企てる上でとても大切なことです。
ちなみに、多くの中小企業は「作る」か「売る」で商売を行っています。確かに「作る」と「売る」はビジネスの2大基本型なのですが、この「作り方」「売り方」のレベルだけでビジネスを企てようとすれば、残念な結末が待っています。
それは、経営上の思想が改善レベルに留まってしまうため、今の延長線上を超えていかないことに起因します。
経営者が、他社との違いを改善レベルで捉えてしまっているとどうなるか。当たり前のことですが、他社との違いを改善のレベルで叫んでしまうことになります。
例えば、「当社の板金加工は精密です」「当社の店舗は陳列にこだわっています」。これでは、お客様には当然の取組みにしか聞こえません。一方、「当社の板金加工は精密で金型不要です」「当社の店舗は独自のデータ解析でクロスマーチャンダイジング陳列しています」。いかがでしょうか?
結局のところ現場をどう動かしているかに帰結するのですが、その動かし方の背景となる思想の違い、すなわち「考え方」のレベルに違いがあるということです。
「上手く作れる」「上手く売れる」は大切なことではありますが、それをウリ文句としたところで、お客様からは「それがあなた方のシゴトでしょ」と一蹴に付されてしまうのがオチです。
このように、「作り方」「売り方」のレベルで考えている限り、その能力が例えどんなに高度であったとしても、売上にこそなれど利益が生まれにくいという現実があります。
このため、高収益を実現し、独自の成長発展を見据えるならば、「作る」「売る」を「考える」に振っていくことが大切です。
ここで「考える」というのは何か…と問われれば「応用する」ということです。自社の持つ能力をお客様の価値にどう応用するのか…を考えるということです。
能力をそのまま売って売上を貰うか、能力を価値に転換して利益を創るか。同じような能力であっても業績に決定的とも言える差が生まれてしまうのは「考え方」、すなわち応用力の差に他なりません。
「考え方」を変えれば、お付き合いしている客層が変わってしまうかもしれません。それに、社員スタッフさんにストレスをかけることでもあります。これらはリスクかもしれません。
ですが、ビジネスのグレードを引き上げていくことを目指すならば、能力レベルの向上を前提としつつ、その応用を考えていくことが絶対条件だということです。
高収益を実現しながら独自の成長を目指すならば、基盤となる能力そのものも大切ですが、それをお客様のためにどう使うか…、すなわち応用力を発揮しようとする意識が大切です。
能力の高さをそのまま売ろうとしてしまっていませんか?
能力をお客様価値へどう応用するかを考えていますか?