【第121話】躍動感あふれる成長企業が持っている力強い“種火”とは
10年連続で増収増益。一方、15年連続で減収減益……。稀に10年以上、収益が変わらず…といった企業もいらっしゃいますが、大抵の場合、大きく見れば売上・利益にトレンド(趨勢)があるものです。つまり、上っているか、はたまた下っているか…のどちらかです。
そして必ず、成長企業には「理由」があり、衰退企業には「言い訳」があります。ですから、上りたければ「言い訳」を止めて、上る「理由」を作ることを決心しなければなりません。
企業ごとに成長の「理由」は異なります。しかし、その性質はとても似ています。成長の「理由」、成長シーンに共通するのはどんな点だと思われるでしょうか。
まず大切な認識は、「売れる理由と儲かる理由は違う」という点です。経営とは投資です。費用を投下した以上に売上が上がるから利益が出て、経営を維持できるのです。
あるいは、設備投資のような中長期、多期間で考えれば、投資に見合ったキャッシュリターンが生まれているからこそ、経営を発展させることができるのです。投資してリターンを得て、またそれを投資してもっと大きなリターンを得て…。この拡大再生産の過程を突き進んでいくことが、真の成長と呼べるものです。
つまり、投下資本に対して利益・リターンが生まれる状況を予め建て付けておくことが大切なのです。それができれば苦労はしない…そんなご意見が聞こえてきそうです。
では、利益・リターンはどのようにすれば生まれるのでしょうか? 利益・リターンが生まれるメカニズムはあるのでしょうか?
利益・リターンを得る建て付けが大切と申し上げていますが、もちろん、売れなければそれを実現することはできないので、売れる理由、必要、欲しい、安い…を整えることは大切です。
ところが、売れる理由づくりから着手するとどうなるか…。これが間違いの始まりです。
まず、売れる理由を整えようとすると、売れそうなモノ、必要そうなモノに目がいきます。必要なモノというのは必要な分だけ売れるでしょうが、利益としては出にくいということを予め分かっておかなければなりません。
商品開発では、必要性にもっと応えようと、必要な機能がどんどんとテンコ盛りになっていきます。そして、原価はかさみ…。売価が高くなると必要だけど誰にも買ってもらえないというところで均衡します。
つまり、必要性を満たそうとする競争の土俵に乗ってしまうと、価格の決定権が顧客にある下で、売価と原価が釣り合うところに向かっていき、必要な量を売価≒原価で商売することになってしまうのです。
これは、単位あたり生産コストが安い企業の順に優位性があるということであり、すなわち機械化、生産設備、労働装備をばっちり整えて、大量生産する企業に有利な競争ということです。
どんな企業に向いているかといえば、大企業、大資本に向いた市場ということがお分かりいただけるでしょう。
一方、中小・ベンチャー企業は違います。必要性という巨大な市場を相手にせずとも、特定のお客様が欲しいと思ってくれる儲かるモノを考えることに向いています。
資本力ではなく、工夫努力で儲かる道を拓いていくことができるのです。この工夫努力の進め方は、概ねハッキリしています。それは、お客様に欲しいと思ってもらえる「テーマ」を考えるということです。
結婚式をやりたがらない人たちのための結婚式、先祖代々の土地を守るアパート経営、運動が苦手な人のためのスポーツジム。。。必要じゃないけど、やりたい…。
こういった「テーマ」を弊社では“種火”と呼んでいます。力強い“種火”があるから、そこに資金を投下すれば良く燃える。投資効率良く利益が上がるのです。
“種火”を創る工夫努力を惜しんで、拙速に事業を開始すれば、追加の薪を燃やすのに追いつかず、せっかくの“種火”を消してしまいます。絶対に慌てず焦らず、力強い“種火”を企てることが大切です。
欲しい市場で戦っていますか?
御社の“種火”は力強く燃えていますか?