【第120話】本物の成長発展をもたらす事業機会の見出し方
御社では、次なる事業機会をどのように見出しているでしょうか。あるいは、見出そうとしているでしょうか、とお聞きした方が正しいのかもしれません。
事業機会をどのように見出そうとしているかは、その企業の文化、根本的な考え方を如実に表します。
あっちでこんなビジネスが流行っている、そっちでは、こんなビジネスが儲かっている、これからは○○の時代だ…。
大きなトレンドを踏まえて事業を刷新していくことや、そのための情報収集は大いに結構なのですが、こういった発想は何やら軽くて薄っぺらさを感じます。
一方で、苦心しながらも、お客様への新たな提供価値を創り、販売という難航苦行に立ち向かい、そんな苦行の最中にあっても理想とする未来を語る…、そんな社長もおられます。
すこし単純化しすぎな感はありますが、これらの事業機会の見出し方の違いは、「すぐにでも売れそうなモノ」に意識があるか、「お客様のためになるモノ」に意識があるかということです。
もう少し語弊を恐れずに申し上げれば、「仕事になりそうなモノを探しているのか」「仕事そのものを創ろうとしているのか」という点で、決定的に違いがあるのです。
補足して説明すれば、新たな売上・利益の獲得を考えた場合、「新しい」は常に欠かせないキーワードです。ですが、この「新しい」が曲者です。
例えば、ニューヨークで流行ったパンケーキ屋さんを少し変えて表参道でやる。秋葉原で流行ったメイドカフェを少しもじって大宮でやる…。
初めてそれらのお店に来たお客様は「新しい」と感じるでしょうが、これらは誰かが先に考えて既にあったモノに他なりません。
もちろん、すべてが新しいビジネスなどない訳で、先人達の知恵をまったく学ばずに製品・サービスを作るべきだなどと言っているのではありません。ましてや、商業的発想として、ないところに持ってきて売るという流通機能に、云々申し上げているのでもありません。
要は、御社のそのせっかくの頑張りを、誰もそう思ってくれていませんよ、ということです。つまり、お客様から見れば、仕事になりそうなモノ、売れそうなモノを持ってきて売った人にしか見えないのです。
もっと言ってしまえば、モノマネ、パクり、他人のフンドシで相撲を取った人…。それでビジネスが当たれば、なおさら残念な名声が広まってしまうということです。
事業機会を見出す際の「新しい」とは、何らかの切り口や着眼点といった「新しい価値軸」を見出すことに他なりません。
つまり、製品やサービスそのものの新しさに留まらず、その製品やサービスがもたらす価値が「新しい」になっていることが重要なのです。
事業を行っていく上で、経営環境、メガトレンド、技術動向…といったことを踏まえておくことは追い風に乗る意味でも大切です。
ですが残念ながら、すでに見えている流行、既存市場という勝手な括り、顕在化したニーズといったモノは、そのまま御社の新たな事業機会にはなり得ません。あくまでも参考情報でしかないのです。
経営を伸ばされている企業は、必ず核となる「新しい価値軸」をお持ちです。これは、製品・サービスの特徴ではなく、お客様から見て新しいのです。
金型不要の部品製造、超短納期の受注生産、一括借上げ不要の満室マンション建設、蛇口一体型浄水器+フィルター定期便、食材在庫確認サービス付きジャストインタイム配送…。
経営を伸ばしている社長は、新たな顧客価値、つまり概念的なレベルで自社の強みを語れます。それは、ただ作る、ただ安い、ただ届ける…といったことのもう一段上のレイヤーで顧客価値を考えているからに他なりません。
御社の事業機会は“新しい”ですか?
それは、独自開発の事業機会だと胸を張っていえますか?