【第119話】未来をひらく“独自性”と失敗する“差別化”の根本的な違い

足りている時代、なかなか売れない時代…新たに製品・商品を考えようと思えば、当然のことながら“差別化”といった言葉が頭に浮かんでくることでしょう。

 

これは市場で選ばれていくために、売れていくために必要なことであるということは、重々ご承知のところと思います。

 

ところが、多くの事業プランをお聞きする中で、その9割は“差別化”を間違ってとらえてしまっています。つまり、販売開始、販売拡大に向けた準備を間違っているのです。

 

「えっ、9割も?」と感じるでしょうが、ご心配なく。次の3つの視点で修正していけば、いずれ高収益領域に到達することができるでしょう。

 

まず、9割方の経営者が「今までにない製品」といいながら、競合製品、従来製品との“違い”を説明されます。これは、企画・開発の段階において、それら従来品と“違う”製品を作ろうと考えてきたからでしょう。

 

この考え方は、根本的に、しかも致命的に売れない可能性を秘めています。もう何となくお気付きの方も多いでしょう。そうです、その“違い”をそもそもお客様が欲しいと思ってくれるのか…ということです。

 

技術者、エンジニアの方などに多いのですが、「特許を取得できる新技術です」「これまでにない機構で動いています」「他社は誰もやっていません」といったご説明です。

 

もちろん、他社が誰もやっていないようなことに挑戦されるのは、とても素晴らしいことですし、この世にないモノを創ろうと目指す姿勢は技術者として称されるべきことでしょう。

 

ですが、単に誰もやっていない…といった、お客様不在の着想は、経営として苦しむのは火を見るより明らかです。お客様から見た機能や便益が同じであれば、それは「同じお寿司を違うお皿に盛っただけ」に見えてしまうかもしれません。

 

辛いスタートにならないためにも、主張されるその“違い”をお客様便益の“違い”にまで、もう少し整え直してから市場に出していくことが大切です。

 

続いて多い間違いは、市場イメージ、顧客イメージが魅力的に感じられないケースです。どんなお客様にお買い求めいただくのか…大切なことなのですが、その市場イメージが、堅苦しくて、しかも全く新しくないケースです。

 

「30~40歳代の女性で、丸の内で働いていて、年収○百万円…」確かに顧客イメージはハッキリしていますが、この製品をなぜ欲しいと考えるのかがイメージできません。

 

顧客イメージの明確化とは、お客様に合わせろということではありません。むしろ自社側発信、プロダクトアウト的な市場創造、製品開発で、お客様の欲しいを喚起することをお勧めしています。

 

例えば「本商品は、これまで○○に不便を感じていた方々に、新しい解決法を提供します。」といった類のものです。やや心情、サイコグラフィックに振った市場の“違い”の説明です。

 

そして、最後にお伝えしたい間違いは、御社の目指す未来像、理想像の掲げ方です。事業に取り組む背景の“違い”は、十分に“差別化”要因になり得ます。

 

ところがです。みんなを幸せに・笑顔に、地域を元気に、日本一を目指す…こんなのが多いのです。こういったことは、誰が言っても同じになりませんか?あなたの言葉ですか?と聞き直さざるを得ません。一国一城を与る経営者の主張としては、浅すぎます。

 

「真面目なる技術者の技能を、最高度に発揮せしむべき自由闊達にして愉快なる理想工場の建設」はソニーの設立趣意書に書かれた「会社設立の目的」の第一項です。自分の言葉で語るとはこういうことです。意志がこもっていなければなりません。

 

これまで“差別化”の失敗例とその修正法をお伝えしてきましたが、真の“差別化とは、その企業の、社長のフェノタイプ(表現型)として生まれるものです。決して他社・他人との比較で生まれるものではありません。

 

よって、“差別化”とは“独自性”と一体的であり、内に秘めた力を発揮・発露せしめたものです。これこそが真の“差別化”の姿なのです。

 

“差別化”を自分発信の“独自性”と捉えていますか?

御社にしかできない仕事に取り組んでいますか?

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