【第118話】独自の成長に欠かせないのは「売上主義」か「利益主義」か?

新事業や新製品の企画・開発段階では、それが果たしてどのくらい売れるだろうか。。。と考えがちです。実は、これが失敗への入口だということを気付かずに。

 

もちろん、売れるように準備をしていくのですから、売れていく状況に想いを馳せておくことはとても大切です。

 

ところが、企画・開発段階で、売れることへの想いが強すぎると、大切なことを失っていきます。最初に目指していたはずの「独自性」を失っていくのです。

 

つまり、売れるようにしようと考えれば考えるほど、フツーの事業・製品になっていってしまう傾向があるのです。これは“企画・開発のパラドックス”です。

 

これは当然の思考結果でもあります。どれくらい売れるだろうか。。。と考えれば、当然ながら先行する類似の事業や製品の販売実績に目がいってしまいます。

 

いつのまにか、類似事業のパクり、既に売れている物のモノマネ。。。に知らず知らずに寄っていってしまうのです。

 

そして、事実上、類似事業や既存製品のマイナーチェンジに終わり、自らの開発の不発を認めんとするあまり、先行他社との“違い”を自社の優位性だと主張します。これは、相手のレールに乗っておきながら独自性を主張するというイタイ事態と言わざるを得ません。

 

こういった追従行為自体がムダだと申し上げているのではありません。競合他社の開発の方向性や新製品の特徴などは、しっかりと調査し追従しておくことも能力面・技術面から重要だからです。

 

ですが、新事業や新製品で、自社の未来を拓いていこうと切に願うならば、企画開発のパラドックスのメカニズムを理解し、意図的に意識を「売上主義」からズラしておかなければなりません。それが「利益主義」です。

 

“利益”が生まれるメカニズムに想いを馳せていただくと分かりやすいでしょう。売価が原価を上回るのはなぜでしょうか。

 

それは、お客様がその事業や製品を通じて手に入れる「価値(=売価)」が原価を上回っているからです。

 

私たちは、製品やサービスなどの価値を最大化するための手法として、バリュー・エンジニアリング(VE : Value Engineering)という先人たちの知恵を知っています。VEでは、価値(Value) = 機能(Function) / コスト(Cost)と教えます。

 

ここに着想を得て企画・開発に応用するならば、目指す公式は、投資効率(Efficiency) = 顧客価値(Value) / コスト(Cost)となるでしょう。

 

すなわち、投資する「コスト」をいかに「顧客価値」へ転換できたかという「投資効率」を企画・開発しているのです。ここで「顧客価値」を「売価」と置き換えれば、これは原価率の逆数でもあります。

 

この公式は、「投資効率を上げようとすれば、コストを投下するそれ以上の顧客価値を創出せよ」との命題を投げかけています。あるいは、「顧客価値を高めつつ、それをコストミニマムで実現する方策を企画せよ」と。

 

あらためて申し上げれば、新事業や新製品の企画・開発とは、売れることを一義的に目指しているのではないということです。売れた結果、利益を創出することとなる粗利(グロスマージン)を企画・開発しているのです。

 

そして、何といっても「利益主義」の大切な効果は、「独自性」を生むという点です。利益を出そうと考えれば、高粗利を目指す過程で、新たな顧客価値を考えることになるため、自ずと独自性が生まれるのです。「売上主義」が市場への迎合を招くのとは対照的です。

 

売れる理由も大切ですが、同時に儲かる理由も大切です。売れる理由と儲かる理由は実は全く違います。

 

「売上」は後からの行動力で多少カバーすることもできますが、「利益」は企画・開発段階の思考力で大方が決まってしまいますので、十分に設計しておくことが大切です。

 

新事業は売れさえすれば儲かる事業になっていますか?

企画・開発は「利益主義」で独自の成長を歩んでいますか?

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