【第122話】ビジネスを浮上させるために不可欠な仮説意識

 

「こんな事業を考えているのですが、どうでしょうか?」というご質問を頂戴することが多々あります。

 

こういったご質問の背景には、事業のポテンシャルを見極めたいという気持ちがあるわけですが、その気持ちの持ち方は大きく二種類に分かれます。

 

それは、仮説を持っているか、持っていないかの違いです。

 

よく仮説が大切という話を耳にされると思います。これは、新事業や新製品が売れる理由と考えていただければ、大切…の意味もお分かりいただけるでしょう。

 

常々、新事業投資や新製品開発投資は挑戦ではなく、試行(トライ)だとお伝えしています。こうやればこうなるはず…という仮説の積み上げになっているということです。

 

例えば、アンケート調査。マーケティングサイエンスでは、アンケートによって仮説を検証するという手順を踏みます。

 

つまり、お客様はこういった製品・サービスにこう反応するはずだ、という仮説があって、その仮説を検証するために質問項目を設定し、その仮説の当たり具合を測定しようとするということです。

 

また、質問項目ごとの購買行動への影響度なども、例えば分散共分散構造分析などで定量化することを試みたりすることもあります。

 

ここまでの分析が必要かどうかは別として、要は何も仮説を持たない状態で、アンケートで「何が欲しいですか?」などと聞いても全く意味がないのです。

 

ですから、新事業や新製品が、単なる挑戦になっていると、成功の可能性は著しく低いと言わざるをえません。仮説検証、すなわちこうなるはずだという試行になっていることが大切です。

 

特に売上高が10億円を超えてくれば、経営に成功確率の高い科学が必要になってきます。成長拡大を考えるならば、仮説検証的な思考が重要性を増してくるのです。

 

事業の立ち上げを「事業化」ということがあります。これは、事業のネタを採算性が見込めるレベルまで整えていくことを意味します。

 

事業のネタそのものも大切ですが、むしろ儲かりそうもないネタであったとしても、いかに採算に乗る事業にしていくかという、「アイデア」が大事だということでもあります。

 

事業モデル、ビジネスモデルといったことが盛んにいわれるのも、足りている時代、つまり、製品・サービスだけで差別化が困難な時代だからといえます。

 

製品・サービスの特徴だけに留まらず、附帯サービスやオファー、提供方法、課金方法、事業理念や取組背景…全体としてどういう事業「アイデア」なのかが問われているのです。

 

前述の「こんな事業を考えているのですが、どうでしょうか?」というご質問が、仮説を持たない方のご質問だったとすると、このご質問は、単に「売れると思いますか?」という質問に過ぎないということです。

 

これでは、まだマーケットで勝負できるレベルに仕上がっていないのですから、「ご自由にどうぞ」あるいは「これからどうやって準備していくおつもりですか?」と聞き返すことになってしまうでしょう。

 

一方、仮説を持っている方のご質問だったすると、その仮説の構造や要因について具体的な議論ができます。

 

そして、仮説があるからこそ修正が効き、もっと成功確率をあげながら、事業を強く育てていくことができます。

 

まずは、仮説の仮説状態であっても、根拠が弱くても、定量的にまでなっていなくても、何らかの仮説意識をもって事業企画に取り組むことが大切です。

 

販売とはもっとも最終段階の仮説検証です。売ってみなければ分からない…のも事実なのですが、その前の準備で結果の大方は決まってしまうのです。

 

御社の新事業・新製品は“仮説”検証になっていますか?
出たとこ勝負の「挑戦」ではなく、結果を一定範囲で予定できる「試行」になっていますか?

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