【第116話】経営に本物の強さをもたらす目的・目標の掲げ方
肝いりの新事業の立ち上げともなれば、年ごとに棒が伸びていく売上グラフが掲げられ、経営陣やスタッフは、緊張やプレシャーを感じながらも期待や高揚感の中で、試行錯誤に取り組んでおられることでしょう。
経営計画、新事業構築、大規模投資。。。では、目標の一つとして売上高を掲げます。
「目標」とは、目指す標という意味でしょうから、何を、どこまで、いつまで、のように項目毎に期間や水準を定めたものです。
経営において、売上とはそれまでの努力が現金化された結果ですから、結果が出て嬉しいという気持ち的な意味でも、売上高は結果「目標」としてとても明快です。よって、3年で10億円、5年で20億円。。。売上高が一つの「目標」として掲げられることが多いのは至極当然のことといえます。
一方で、強い経営には、強い意志が存在していることに異論を唱える方は少ないでしょう。事業とは世の中の一役を担うことであり、売上・利益だけでは測れない大切な存在であって、存在自体に十分な意義があるのだと。
このような考え方は、その事業に取り組む「目的」がベースに在るということが分かります。
「目的」とは、目指す的といった意味でしょうから、経営における「目的」とは、最終的に成し遂げようとしていること、もしかすると達成できないかもしれないけど、そう在りたいと考えていること、あるいは、その方向を目指していくことを意味します。
これは、限りなく経営理念、哲学やビジョン、大義に近いモノといえます。
残念なことに、毎日の仕事において、経営理念やビジョンといった、その先の目的意識というのは忘れ去られがちです。朝礼で経営理念を唱える企業もありますが、割合的にいえば少数といえるでしょう。
つまり、経営理念、事業目的はあまりにも前提すぎて、日常の仕事から“割愛”されることが多いのです。
新事業や設備投資においても同様です。社外へのプレゼンなどの際に、後から付け加えられるのがオチで、いちいち企画書の最初に理念レベルの目的から書き始める方は少ないのが実際です。
ですが、そんな分かり切ったこと、と言わずに是非とも書いて頂きたいのです。スライド一枚、数行であっても、「目的」意識を持つことの力を侮ってはいけません。
例えば仮に、「目的」が売上高だとしたら、どういう経営になるか。。。ということです。
「みんなで100億円を目指そう!!」などと目的レベルを金額で据えてしまうと、手段は何でも良いことになってしまいます。
そして、「目的」の達成を目指して、手っ取り早く売上高が上がる方法をかき集め、その中から有望な売上高向上策という“手段”を買い漁ることになってしまうでしょう。
一方で強い経営は違います。「目的」は社会的な大義であり、「目標」はそこに向かっていくための手段であるという従属関係の下で検討されることになります。
強い経営は、意志としての「目的」を設定し、それに向かって「目標」を決め、達成するための手段を自ら考えます。自らの力で積み上げようとします。
なぜならば、その独自の「目的」を目指していくためには、独自の手段でしか実現していくことができないからです。
強い経営は、「目的」設定の力強さもさることながら、達成する力というよりはむしろ目指そうとする力を重視しています。たどる軌跡そのものが大切なのです。
大変なのは重々承知していますが、「目的」を目指して自分で創った売上高はとてもカラフルです。是非、売上高の色を大切にしていただきたいと切に願います。
「目的」なき「目標」を掲げてしまっていませんか?
御社の売上高は、今日も、そしてこれらもカラフルですか?