【第56話】御社の“売りモノ”は何ですか?
収益拡大を企てていこうとした場合、どうしても新しい“売りモノ”が必要になってきます。
新しい“売りモノ”といっても難易度や時間軸によってレベル感が異なります。
これから試行錯誤して全く新しいモノを創り出す場合から、既存の商品・サービスを改良したり、用途を広げたり、あるいはもっと単純にその商品の説明の仕方だけを変えるような場合もあります。
説明の仕方を変えるだけで新しい“売りモノ”になるのか。。。という疑問の声が聞こえてきそうですが、実は新しい“売りモノ”になり得ます。
物理的には同じ商品・サービスであっても、受け手である顧客や顧客の状態が変われば、得られる便益も変わってくるため、顧客から見れば異なる“売りモノ”になり得るのです。
商品の説明の仕方を変えるというのは、売り方や売り先を変えるのに似ています。売る場所であったり、売る時間であったり、顧客の状態が異なれば物理的には同じ商品・サービスであっても、顧客が得る便益が異なるからです。
よって、新規に顧客を獲得していこうとすれば、そういった顧客の状態に着目し「あなた向けの商品・サービスですよ」ということを説明することが必要になってきます。
弊社では、“売りモノ”を顧客が受け取る便益の全体と捉えています。つまり“売りモノ”とは、商品・サービスに留まらず、買いやすさ、営業さんの対応、アフターサービス、料金、支払条件、情報提供等、一連の活動から受ける「全体」としての便益という訳です。
例えば、病院であれば、診察や治療といった核となる医療行為に対する信頼は勿論ですが、先生や看護師さんからの説明、立地、通いやすさ、院内の雰囲気、待ち時間、診察予約システム、受付、価格、支払方法、保険、関連情報提供。。。といった全体です。最初に病院を選ぶとなったらこういった全体を見渡しませんでしょうか?
この全体が顧客から見て選ぶ理由になっているのですから、各項目で濃淡こそあれこの全体が“売りモノ”なのです。
少しこれまでのお話を整理させていただきますと、商品やサービスの特徴とはその便益の受け手である顧客が決めるものであるということ。加えてその顧客の置かれた状態に依存するということです。
顧客が選択の決定を行うために見渡すのは商品の核となる機能部分だけに留まらず、その購買行為に伴う全体を見渡すことで、購買後に感じるであろう便益を想像しているということです。
いかがでしょうか?御社の商品説明はこのような認識に立って書かれているでしょうか?
マーケティングの教科書では「ドリルを買う人が欲しいのは穴である」という秀逸な例えがあります。ドリルはあくまでも手段で顧客が欲しいのは穴。
この穴のもっと先を想像すれば、顧客が欲しいのは「組み立て家具を買ってきて部屋の模様替えをして気分転換」であったり、「日曜大工で庭のテーブルとイスを作ってくつろぎの家族団らんの時間」であったりするかもしれません。
顧客が欲しい便益をこのように見通したとすると、それに合った商品説明としては「これ一台でどんな家具にも対応、家具組立専用簡単ドリルセット」や「日曜大工で家族団らんの一時を!耐久性抜群、日曜大工万能ドリル」といった説明が必要になってくるかもしれません。
顧客が自社の商品・サービスを使ってどんな便益を得ることができるのか。購入後、どんな気持ちになれるのか。こういったことの説明まで含めて“売りモノ”だということです。
ネット時代になり、人伝えではなく自ら情報を探索できるようになった結果、顧客が選択を決定するのに必要な情報量は増えてしまっているのです。
商品を売りたいと考えた時、どこかで聞いたような言葉ですが「説明責任」は売り手にあると考えるべきです。今考えている“売りモノ”を手段と捉え、その先にある顧客の便益に想いを馳せてみることが肝要です。それこそがイマドキな“売りモノ”なのです。
御社の商品・サービスを利用する顧客の気持ちを想像していますか?
御社では商品・サービスの便益を説明しきっていますか?