【第67話】儲かりそうにないコトを儲かるようにする「企画」の練り方
100円ショップでお守りを売っていたら「お守りまで100円、安い!」と言いながら喜んで買うでしょうか?
そもそも売っていませんが、仮に売っていても買う気にはなりません。
では、湯島天神で神主さんに合格祈願の祈祷をしてもらった鉛筆が1本100円だったとしたらどうでしょうか?
受験生やその親御さんは5本、10本、1ダース、まとめて買ってくれそうですし、お守り価値としては1本千円でも売れそうです。
我々は買い物をする時、何らかの“有難味”を買っています。この“有難味”と照らし合わせて、相応の価格を判断します。
ですから、事業で利益を出そうとすれば、購入を検討するお客様に対して“有難味”を説明する必要があります。
例えば、産地直売所が各地で人気です。
産地直売所とは、農家さんが野菜を、漁師さんが魚を、直売所に持ち込み、販売高の一定割合を手数料として直売所に支払うという委託販売方式の事業モデルです。
この事業モデルでは、農家さんや漁師さんが採れたてを持ち込むので新鮮、近隣の方々なので輸送費や流通中間マージンが掛からず安価、持ち込んだ農家さんや漁師さんは直接お客様の顔が見えるのでやる気が出る、といった特徴が挙げられます。
お客様から見れば、安くて新鮮、その上、生産者さんも喜ぶんだから。。。という“有難味”が成立します。
この場合、「産直」という事業モデルそのものが“有難味”を説明しています。
ちなみに、銀座・伊東屋さんでは、おススメ文房具160点が掲載された「銀座・伊東屋 文房具 BETTER LIFE」という本を1,400円(税別)で売っています。
この本の売り文句は「明治37年の創業から東京・銀座で111年、文房具を選び、見極めてきたスペシャリスト銀座・伊東屋のスーパーセレクション! ロングセラー、スタンダード、新作が、発想のスイッチをオンにしてくれます。」です。
この本は、端的に言えば取扱商品のパンフレット・カタログです。普通の会社でいえば大抵、営業の一環として無料で客先に配布しているものです。
それが有料で販売できる意味とは、伊東屋さんの事業モデルの核が「文房具のスペシャリストとしての情報能力」であるという事です。
つまり、伊東屋さんはメーカーさんや卸さんから納められた商品を売っている文房具小売店ではなくて、文房具のセレクトショップであると宣言しているのです。
そして、そのセレクトの基軸はビジネスで発想のスイッチをオンにすることです。
提供している“有難味”が「文房具が手に入る」ではなくて「発想のスイッチオン」ですから、その価値は相当です。
新規事業の立ち上げや、既存事業の販売拡大にあたっては、事業や商品がお客様に提供できる“有難味”について説明できるように準備しなければなりません。
産直の野菜や魚、伊東屋さんの文房具は、あくまでも取扱商品という手段であって、お客様が望み納得する“有難味”は別にあります。
事業企画とは、一見儲かりそうにない事業や商品であっても、それをどうすればお客様の“有難味”につなげられるかを考え抜き、しっかりと説明できる準備を整えることです。
御社の「企画」はどんな“有難味”を提供していますか?