【第68話】「仕事好き」と「お金好き」による経営戦略の違い

「仕事は好きですか?」と聞かれたら、皆様はどうお答えになられるでしょうか。

 

このコラムをお読み頂いている方の多くは、経営者やプロジェクトマネージャーといった経営や企画に携わられている方々ですから、大方、「好き」というお返事が期待できそうです。

 

では、「お金は好きですか?」と聞かれたら如何でしょうか。

 

はっきりとお答え頂かなかったとしても、心の中では「好き」というお返事を期待したいところです。

 

社員の生活を預かる経営者ですし、会社の未来に対してリスクを抱えるお立場ですから、資金に対する正当な欲求や、経営数字に強いことは不可欠です。

 

勤労は美徳であって、働く意志とはとても尊いものです。一方で経営や生活という面で、お金なんて無くても。。。という訳にはいきません。お金の為に働いているというのも一面として事実でしょうが、それが全部という事ではありません。

 

多くの経営者殿とお会いしてお話をお聞きする中で、「この方は仕事が好きなのか、お金が好きなのか。」といった点で、考え方の違いを垣間見ることがあります。

 

つまり、「仕事好き」と「お金好き」には強弱関係があり、そのどちらが強いかによって、向いている経営の成長発展の方向性に大きく影響を与えます。

 

「お金好き」が強い場合、意識は何と言っても「売上」に向かいます。よって、いかに短時間で売上を伸ばしていくか。。。が戦略上の命題となります。

 

売上を伸ばす早い方法はM&Aです。こういった方法を含めて、売れそうな商品・サービスを数多く取り扱うこと。そして、流通や販売代理、フランチャイジーといった商流にからむことで、経営全体としてお金の流れを太くしていくことが戦略の中心になります。

 

一方で「仕事好き」が強い場合、まずはその「好き」の対象である商品、技術、文化。。。といった事を育て絶やさないようにしていくことが戦略上の命題となります。

 

よって、それらをいかに育てながら収益化していくかといった方向で、新製品や新サービスの開発と併せてその販売拡大に工夫していくことが戦略の中心になります。

 

商売を活動レベルで考えれば「作る」と「売る」から成っています。よって、企業もその生まれなどから、どちらかが強いというアンバランスな“性格”を持ち合わせています。

 

これを今回のテーマに当てはめると「作る」は「仕事好き」に、「売る」は「お金好き」に対応します。

 

どちらかが強いこと、そのものが強みになっている部分でもあり、経営の性格上、成長発展の方向性を考える上で向き不向きがあるということです。

 

今の時代、作る仕事と売る仕事の境目は無くなってきています。生産体制や流通チャネルは多様化し、どう作るか、作ったものをどう売るかまで含めて全体として一つの事業モデルになってきているからです。

 

作るのが商売の製造業であっても、製品企画に留まらずリースやジャストインタイムといった売り方を準備していたり、売るのが商売の商社であっても、製品技術を学び開発から資金調達までの全体をプロジェクトとして組成していたりと、作ることと売ることをより一体化することで、事業モデルとしての優位性を築いています。

 

ですから、これまで「仕事好き」が強かった企業であればもう少し「お金好き」に。これまで「お金好き」が強かった企業であればもう少し「仕事好き」になることが、経営成長のヒントになり得ます。

 

作る会社では、設計が考え、製造が作り、営業が売る。。。といった組織縦割り的な考え方は通用しなくなっていきます。売る会社でも、売れそうな商品を自ら作り出す気概が必要不可欠になっています。

 

性格的に難しいのは承知の上で申し上げています。ですが、世の中に置いていかれないためには意識的に取り組んでいくことが必要です。

 

御社の性格は「仕事好き」ですか「お金好き」ですか?

「作る」と「売る」で一体的な強みを創っていますか?

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