【第5話】販売が伸びない本当の理由

一生懸命に製品・商品を開発して販売を開始し、取引先が決まる瞬間は何度経験しても嬉しいものです。そして、受注が積み上がり、売上も昇っていく。。。

 

一方、受注まではしても単発。。。受注が積み上がらず、売上も低空飛行。途中で何度も地面に足を付きながら、その度にちょこん、ちょこんとジャンプして、また着地。。。という状況をお見かけします。

 

こういった企業に限って“直ぐに売れる方法”を欲しがるのが常です。そのように結果だけを急ぐのであれば我々のような経営コンサルタントに相談するのではなく、販売先の紹介・斡旋を行っているマッチングサービスの会社さんも沢山ありますので、そういったサービスを利用された方がよろしいかと思います。

 

商品自体はそれなりに良いのに販売が積み上がらず苦しんでいる企業の多くが、販売に対する認識、もっと言ってしまえば事業コンセプトの設定が間違っているために、売れていかないのです。

 

当然のことの様に聞こえるかもしれませんが、商売をするならばその商品を、欲しい人、好きな人、から売っていくのが鉄則です。実はこれが結構難しいのです。

 

難しい理由は簡単です。商品化を考えているプロセスで顧客像が見えきっていないからです。欲しい人、好きな人が分かっておらず、誰の為に作っているのか。。。モノが足りている時代、仮説であっても顧客像を持たなければ売れていくはずはありません。

 

経営者の方から、「良いものなので広めていきたい」、「広く知ってほしい」といった言葉が聞こえたら大体アウトです。事業を経営する立場としてその事業の社会的意義や大義名分を持つことは重要です。しかし、社会全体を広く自社の提供する商品・サービスの対象と見なし、顧客像や販売展開のシナリオを持たないままランダムに近い営業を展開するのとは意味が違います。ましてや、良いモノなのでそれに抵抗感がある人に売って広めていきたいなどという発想に至っては、もう聞いてはいられません。そして、顧客像が明確にならないまま、見つけてくれ。。。と言わんばかりにランダムに広告を打ったり営業に走ったり。。。

 

このような傾向に拍車をかけているのが、ネットやSNSといった広告手段の存在です。これらの方法が一般的になるにつれて、それに広告すれば欲しい人側が見つけてくれるだろう。。。と考える訳です。これらの手段は有効であり、弊社のプロジェクト推進の中でも活用方法を整備していきますが、手段だけで販売が促進される訳ではありません。

 

折角の受注が単発に終わるのは販売展開のシナリオが出来ていないことに起因します。そして販売展開のシナリオを立てていくためには仮説であっても顧客像を持たなければなりません。

 

商品の良さは、ただ単に広めようとして広まるものではなく、手順、順番があるのです。先ずは商品の良さを分かってくれる、好きな人達でニッチな世界感をしっかりと築いていくことです。言い換えれば、良さを分かる本物の顧客層としっかりと対峙し、そこで認められなければ良い商品とは認められていない、ということを認識すべきです。

 

本物の顧客層との勝負を避けて、良さがあまり分からない偽物顧客層から販売を開始するから単発に終わるのです。ここでいう本物の顧客層というのは大手かどうかといった意味ではありません。その商品について判断能力が高く、必要としている顧客層のことです。

 

そういった本物の顧客層から、その商品がよいモノと認識されたから、そこでの地位を聞きつけた次の人達の購入が誘引され、販売の連鎖が起こっていく訳です。そうした地位の確立に向けた真向勝負を避けて、ただ広めようとしても。。。折角の新商品開発が一時のイベントに終わってしまうのはとても残念なことです。

 

この手順に関する考え方を理解していれば、販売のシナリオが立てやすくなります。現段階では仮説であったとしても、対象となる特定の顧客層にしっかりと認知してもらえば良い訳で、広く知ってもらう必要などないのです。それにもかかわらず、「広く知ってほしい」と言う声が多いのには驚かされます。売り上げにならない認知度など求めても意味はありません。

 

御社の推し進めているプロジェクトは「欲しい人、好きな人」としっかり対峙する準備ができていますか?

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