【第4話】“売れるカタチ”に仕上がってますか?

新製品の販売開始や新事業の営業開始は、収益事業立ち上げプロジェクトの大きな目標地点です。もちろん、販売を開始した後、販売シナリオに沿って売り上げを育てていくわけですが。。。

 

プロジェクトを推進していくにあたり、この開始の瞬間をどのような状態で迎えるかは、その後の販売を大きく左右する非常に重要な準備です。新製品や新たな事業場が出来上がったからといって、それは販売開始の条件の一つではありますが、それだけで十分ではありません。それら以外も販売開始までにしっかりと準備を整えていくことが不可欠な訳ですが、これがなかなか難しいのが実情です。

 

なぜ、これがなかなか難しいのか。。。大方のパターンは、新製品・新サービスの販売開始、新事業の営業開始そのものを目標地点に置いてしまっているということです。目標そのものがリリース地点に向けられていて、その後の販売は「まあ、やってみなければ分からない」という整理になってしまっているのです。

 

この気持ちは、痛いほど良く分かります。新製品の開発であれば、そもそも取り組んでいるプロジェクトメンバーは、その製品ができ上がるのかどうか、生産設備は十分か、製品の耐久性はどのように評価していくのか。。。という状況です。工場や販売所など、新たな事業場を開設して営業を開始するとなれば、建物建設や設備工事、これらに必要な法令手続き、発注先との交渉・契約、従業員の確保等々、絶対にやらなければいけないことに忙殺されながら営業開始を目標に準備を進めている状況です。まずそこまで行けるかどうか不安を抱えながら進んでいる訳ですから、その後の販売にまではどうしても気持ちが及ばない、というのが正直なところ。。。こういった状況ですから目標が販売開始・営業開始に向いており、当然、顧客が買い求めるシーンに想いが至っていない訳です。

 

今の時代、基本的にモノは足りています。そういう時代では、モノの能力や機能のみならず、その使い方まで提案できて初めて商売になり得るのです。顧客にとっての便益をしっかりと説明できなければ良いモノであっても売れないというのは当然と言える購買者心理にあるのです。モノや機能に対するこだわりは勿論大切ですが、それ自体が顧客の便益ではない事を認識しなければなりません。

 

BtoBビジネスであれば、購買者に対してもたらすことができる便益を、損益計算書への影響、今後の経営展開、実現できる世の中への影響などまで含めて、提案していくことが求められています。BtoCビジネスなら購買者の利用シーンや得られる感情まで含めて提案していかなければ、いくら広告を売っても単なる商品情報として購買者の脇をすり抜けていってしまいます。

 

モノや場の準備だけで販売開始・営業開始をしてしまうとどうなるか。。。販売不調を感じてから再びコンセプトを固め直して営業展開し直すための労力は極めて大きなロスになります。

 

収益事業立ち上げプロジェクトの推進にあたっては、モノや場の実現のみならず、購買者の便益を説明しきれるだけの準備も不可欠です。更に販売開始・営業開始後に、どのように売り上げを育てていくかという販売展開シナリオを持つことも重要です。先ずは販売・営業を開始して後はそれから。。。などという考え方は、まず苦戦を強いられることを覚悟しなければならないでしょう。試し試し適当なメディアを使って広告を打ったところで、広告費はまさに垂れ流し、届くべき購買者に刺さる事なく彼方に消えていくだけです。

 

収益事業立ち上げのプロジェクトでは、モノや場の準備に先立ち、顧客便益や利用シーン、そしてどのような販売シナリオ・手順で市場を開拓していくかを描いていくことが不可欠です。これらが事業開始に不可欠な“売れるカタチ”を築いているピースなのです。ピースのハマりが甘いことは許容されても、足りないことは許されません。

 

収益性のポテンシャルが高いところから打出さなければ販売・営業開始した時点で低空飛行になってしまいます。そういう意味でプロジェクト推進とは独自の高い地点へ発射台を持ち上げていく取組という事ができるかもしれません。低空飛行を持ち上げるという行動的努力よりも、発射台を高いところへ作るという思考的努力の方がビジネスとして効果的です。

 

御社のプロジェクトは“売れるカタチ”に仕上がっていますか?

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