【第498話】新事業≠何か新しいこと
「新しいことに取り組むのが良しとされる風潮もありますが、新事業の成功率ってどの程度なんでしょうね」と親しくさせていただいている経営者。
新しいこと…、それが真に新しいビジネスであればあるほど、お客様にとっても未知の商品サービスですから、それを普及させていくというのは大変なことであるということは言うまでもありません。
ですが、成功の定義にもよりますが、やりようによっては概ね成功と呼べるところまで持ち込める、やりようはある…というのが弊社の立場です。
一般に、新事業の成功確率は「千三つ」と言われます。
これは、新たな事業アイデアのうち事業化できるのが2%、そして黒字化できるのが15%、よって2%×15%で0.3%、つまり千三つという訳です。
ちなみに、投資ファンドのマネージャーさんなどから聞く成功確率はもう少し違います。
5社に投資して1社、上場や事業売却によるエグジットを成功させ、3社が鳴かず飛ばず、残り1社が赤字であっても、その1社の成功で採算化できる…といったお話です。
投資ファンドのマネージャーという目利きの力を用いれば、投資全体で見れば概ね採算化できますし、最低限、採算化できる可能性は5社中4社、つまり成功確率80%と呼ぶことができそうです。
ちなみに、こうした全体的な平均像、感覚的な状況データ以上に、成功確率に影響を及ぼす重大なことがあります。
それは、経営者の今の状況です。
今、経営が窮地に陥っていた場合、損を埋めたいという感情が先立ち、一か八かのギャンブルに賭けがちです。
一方、今、経営に余裕がある場合、失わないようにと頭で考えられるため、採算を冷静に見極めることができます。
例え同じような「新事業」であっても、こうした心理状況、置かれた状況によって、成功確率の判断にバイアスがかかってしまうということです。
どちらの状況に置かれた経営者の意思決定の成功確率が高いかといえば、自ずと明らかでしょう。
面白いのは、今、厳しい状況にある経営者ほど、どこかにもっと青い芝生があるのではないかとまだ知らぬ「何か新しいこと」に賭けがち、この窮地から逃れたいと成功確率が低いギャンブルに走りがちです。
今、堅実に経営している経営者にとって、「何か新しいこと」とは良く知る世界でこれまでよりも先に行くことです。
このように、新たなことへの挑戦意欲も様々、いわゆるポジティブ思考とは、その時々の積極性や妙に楽観的な考え方とは違うということです。
そういう意味で、ポジティブ思考とは、理想を描き、あきらめず着実に努力を積み重ねていくという持続的で一貫した姿勢のことです。
経営者であるならば、時々の感情に流されず頭で考え“筋”を外さないように意思決定していくことが大切です。
もう一つ面白いことをお伝えするならば、目標設定を上げると成功確率は下がるのか…という問題です。
不思議なもので、ことビジネスの世界でいうならば、高い目標ほど競合が消えていくため成功確率はむしろ上がっていく…といった逆説的なことが起こり得ます。
要は、周りは関係なくこちら側次第、そこまでやり切るつもりがあるかどうか…の問題。常にやり様はあるのです。
まず足元の経営を採算に乗せようとしていますか?
今よりも誰よりも高い目標=新事業…に取り組もうとしていますか?