【第485話】新商品の完成はお客様が決めること
「〇〇ですが、お陰様でその後もコンスタントにお問合せがあり…」と社長から嬉しいメッセージ、最近の販売状況のご連絡を頂きました。
こちらの新事業は、技術力あるエンジニアリング企業が初めての自社看板商品として企画開発し、4年ほど前にリリースしてからコンスタントに受注を積み上げておられます。
ちなみに、自社看板で勝負する“長寿ビジネス”を念頭に開発に取り組んだものですから、今そうなっている…というのは、当時、社長が描いた未来が訪れているということで、頭の下がる想いです。
こうした売上、自社の努力で拓いた永い売上というのは、栄枯盛衰、浮き沈みある経営の世界で、企業の底力を現わす大切な売上です。
そういう意味で、売上には“色”があり、どんな売上の色を目指そうとするのか…というのは、トップの経営姿勢が問われることです。
少し話はそれましたが、こちらの新商品、とても高額な商品ですが、販売を開始して直ぐに1つ目の受注が実現しました。
しかし一方で、多くの新商品は、販売開始で躓きます。
むしろ、躓く…どころではありません。売れない…と言うことに売り始めてから気付く、といった方が良いかもしれません。
売れる…と思って意気揚々と販売を開始したものの…、全く反応を得ることができず、何とかしようともがくほどに、資金が湯水のごとく流れ出していく…。
こうした際、次の3点をチェックしてみてください。
・こんな想いで取り組んでいる…、「自分たち」の話をしていませんか?
・新しい、楽しい、違う…、商品説明が「抽象的」になっていませんか?
・世の中、地域、社会のため…、「何処かの世界」の話をしていませんか?
新商品、本当に新しいのであれば、なお更、それは分かりにくいことなのですから、丁寧にお伝えする努力をしなければなりません。
ちなみに、分かってもらえない、知られてない、一度使ってもらえれば、といったことは、「諦め」を意味するご発言ですから厳に慎むことが大切です。
それならば、我々商売人は、お客様の話をしましょう。お客様が購入する商品の価値便益を具体的に説明しましょう。お客様が棲む世界で話しましょう。
いかがでしょうか、御社の新商品はそこまで準備されているでしょうか?
ただ単に、物理的に出来上がっただけに留まっていたならば、本当に斬新な新商品ほど売れにくいのは当然のことなのです。
不思議なほどに、多くの新商品が未完成のまま販売開始を迎えます。そして、お客様からの無言…という恐ろしい攻撃で撃沈します。
これまでの経験から、断言できることがあります。売れ始めがスムーズ、立ち上がりが順調でそこから更に新たな展開が起こる…のには理由があります。
それは、販売開始前から「まずは自社で販売しようと準備していた」場合です。
多くの新商品が物理的にできあがった“だけ”に留まってしまう理由は、「そこまでがメーカー、作る側の仕事」だと勘違いしてるからです。
そこから先は、販売代理店、卸売、小売の仕事で、誰にどう売るかなど「自分たちの仕事ではない」と思っているからです。
良い新商品なのに売ってくれない…と嘆く暇があるならば、まずは自分たちで売ってみようとする意識が大切です。
新商品の完成を決めるのは、お客様だと理解していますか?
新商品開発は、お客様が“買える”ところまで準備していますか?