【第477話】本物の成長戦略が危機時の存続力も高める理由

「来期も赤字になったら、オレ、社長を辞めるよ」と社長。男気にあふれ兄貴肌、大変尊敬申し上げている方です。

 

当然のことながら、経営は浮き沈みのある世界です。ですから、永く経営を行っていれば、天変地異、流行り病、世界情勢などなど、自社たちだけではどうしようもないような激変に襲われることもあり得ます。

 

こうした際、誰でも「自分のせいじゃない」と思いたいものです。当然、苦しい状況が訪れる訳ですから、その原因は…となる訳です。

 

そうした状況を、客観的、分析的に理解しておくことは大切です。そうして気持ちの整理をした上で、前に進んでいかなければなりません。

 

ここで先ほどの社長、どこが凄いかといえば「来期には修正してみせる…」と仰っているのです。オレのせいじゃない…という想いをグッと飲み込んで「やってやる」と仰っています。

 

簡単そうにも聞こえますが、これは簡単なことではありません。社長ですから一番苦しい立場なのです。そこに居ながらにして一切の言い訳を飲み込んで、「進むぞ」と宣言してみせる気概は実に大変なことです。

 

ただし実は…、こちらの社長、こうしたご発言、強い姿勢を維持していられる理由もあるのです。

 

それは、資金と自己資本です。普段から、不測の事態にある程度、備えてあるのです。

 

面白いことに、もっと難しいことに挑んだり、もっと前に進もうとしていたり、よりリスクある経営に挑もうとされている社長ほど、痛い思いに対する準備意識も持っておられます。

 

こういうお話をすると、必ず出る反論があります。それは「そうしたいのは山々だけど…」という話です。分かっちゃいるけどそれができないから大変なんだ…と。

 

では、具体的にどんなことに取り組まれてますか?とお聞きすれば「………」となってしまいます。

 

そのための具体的な日頃からの準備策とは、とてもシンプル、「収益性の向上」です。

 

ここでいう収益性とは、売上が年々増えるとか、損益計算書が黒字だといったことではありません。

 

次なる新製品は、今よりも付加価値・粗利の高い製品開発を目指すといったことです。労働投入に対してよりリターンの高い方向性を普段から目指していますか?ということです。

 

収益性向上の指標として分かりやすいのは、「従業員一人当たり売上高」です。次なる新事業が、現業よりも難易度の高いビジネスに挑戦していることの指標となるからです。

 

これとは逆に、売上以上に従業員数が増えていたとすれば、それは経営が安易な方向にベタっと広がってしまっていると考えるべきことです。

 

そして断言できるのは、この方向、つまり収益性を落としながらの売上成長というのは、いずれかの時点で、いずれ苦しくなってしまう時が来る経営です。

 

経営の成長発展とは“投資循環”です。資金を投じて材料を仕入れ製品を創り、それを販売して粗利が生まれ、そこから給与賞与を支払って利益が残り、その利益をまた製品創りに投じていく…という循環です。

 

あるいは、設備投資をして設備投資以上の生産性向上を手に入れ、投資した金額以上を中長期的に回収し、それ以上に生まれたリターンでまた新たな設備投資を行っていくことです。

 

事業経営がこうした投資循環のコントロールである以上、まずはその1回転における収益性、リターンを高めようとする努力こそが成長発展の中身だということです。こうした経営がどんどん強くなるのは、常に難易度向上、経営の質的な向上に挑んでいるからです。

 

経営者にとって、採算意識とは損益計算書よりもむしろ投資回収です。難易度を高める挑戦に投資し、それを絶対に成功させて、そこからリーターンを生み出してやろうとする気概です。大きな工場、立派な店舗…は投資回収に向けたスタートでしかありません。

 

次なる打ち手は「従業員一人当たり売上高」を高めていますか?

収益性の向上で経営の強さを育てていますか?

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