【第452話】売上利益が伸びる努力の方法論
「忙しいことが嬉しいと思えるようになりました。以前、忙しいことに感じていた嫌悪感の原因が何だったのか…、今は良く分かるようになりました」と若社長。
先代から苦境の経営を引き継ぎ、ありったけの努力を経営に注いできましたが、やればやるほど忙しいだけ…、終わりの見えない消耗戦が続いていました。
お客様に応えるのが経営…そんなことは分かっているのですが、嬉しいはずのお客様からのご注文がなぜか拷問に聞こえてしまうのです。
朝早くに起きて、夜遅くまで頑張って。そんな努力の甲斐あって、何とか売上に回復の兆しは見えるものの、徒労感が付きまといます。
なぜこうしたことが起こってしまうのかといえば、労働対価に見合った売価で商売できていないからに他なりません。
これを逆から見れば、労働投入を売上利益に転換するための下準備が足りていないと言うこともできるでしょう。
いわば、日々の努力というよりも、商品サービスの付加価値、ビジネスの仕組み、経営の下準備…に課題があるのです。
今、経営が上手く回っているとお感じであれば、今のまま行動量を増やせば良いでしょう。
反対に、徒労感が尽きない…ということであれば、労働投入を売上利益に転換するためのもう一工夫、努力の仕方をこれまでとは変える必要があることは言うまでもありません。
大切なことなので補足すれば、日々の努力というものを考えれば、行動的努力だけで経営を組み立てていた場合、それはいずれ時間という制約で限界を迎える時が必ずくるということです。
例えば、ゴルフ。毎日、練習場に通う…という努力も大切ですが、こうした行動的努力でスコアが伸びなくなってくれば、スイング理論、練習法、コース攻略法、道具などの知識や理解…といった思考的努力が必要になってくることはお分かりいただけるものと思います。
ちなみに、事業経営が難しい理由は、判断に必要な知識が広範だからです。そのことを知らずに、先代であるお父上の後を継いで、頑張ろうと日々の行動的な努力だけを続けてきたならば…経営がどうなっていくかということについて説明には及びません。
努力とは方法論、アプローチを伴って初めて実を結ぶものです。具体的にいえば、特に経営においては思考的努力が大切だということです。
行動的な努力もムダではありませんが、少なくとも周りはもっと頭を使って仕事をしようとしています。
そうした中、「ウチは行動力がウリだから…」であったならば、いずれ通用しなくなるのは明らかです。
高収益企業に共通していることは、商品企画にあたっては広い市場ニーズを包含して“汎用品”を開発します。そしてそれを自分たちで販売しています。
まず、商品企画…という付加価値、思考的努力があって、その後、販売…という行動的努力が続くのです。
行動的努力とは、ことビジネスの世界でいうならば、それは突き詰めれば「労働力の切売り」でしかないということです。
前述の若社長も、まずはサービスメニューをとことん考えて刷新しました。売れさえすれば儲かるサービスなので、お客様からお声がかかれば「喜んで」、今は徒労感などみじんもありません。
偶然、自社の商品サービス、業界、市場が伸びて、そうした追い風で経営が成長発展することもあります。これはこれで目利きだったといえますが、いずれ日々の行動的努力では突破できない限界が来ることは知っておくべきことです。
努力もいろいろ。事業の売上利益、経営の存続発展…を願うならば、思考的努力が大切です。
日々の努力が行動的努力だけになっていませんか?
思考的努力のために行動しませんか?