【第427話】設備投資が事業を成長させるメカニズムと失敗対策

「この工場増設に賭けてみようと思ってまして、イチかバチかのところもありますが、これは当社がやるべき仕事だと思うので…」と社長の腹は決まっているようです。

 

大きな工場、立派な旅館、映える店舗…、設備投資は経営者の夢です。それをどのように実現していくのか、知恵を絞ることが大切です。

 

さながら挑戦とはそういうものです。結果論なのです。ですから、やるとなったらどんな状況に陥ろうと、必ず成功といえる状況まで持ち込む意欲、やり切る意志が欠かせません。

 

ちなみに、設備投資の魅力は、新たな設備を得て操業規模を拡大させることで、売上を増やす可能性を手に入れられるということです。

 

こうした売上規模の拡大というのは、自社にとっての数字上の意味だけではなく、業界の中で存在感を高めることでもあり、こうした目に見えないことへの挑戦でもあります。

 

しかし一方で、設備投資時点での知恵が足りなかったことで、後々の苦労が生まれてしまうこともあります。

 

こうした苦労が生まれてしまう原因はただ一つ、設備投資で売上を買おうとしてしまっていたからです。

 

またその苦労を生み出す背景となっている要因は、会計上の“まやかし”です。

 

不思議なもので、貸借対照表上、設備投資は「現金」が「設備(固定資産)」に変わっただけで“減ってない”ように見えてしまいます。資産として減っていないのだから心配ない…と。

 

少し考えれば分かることですが、設備投資はおカネを使ってしまっています。そのことに意識が及べば分かることがあります。

 

設備投資の成否はキャッシュフローで考えなければならないということです。設備投資分だけキャッシュポジションが沈んだところからスタートです。

 

例えば、分かりやすいように減価償却や税金が無いものとして考えれば、1億円の設備投資をすれば1億円マイナスからスタート。売上2億円から利益2千万円となれば、投資金額1億円を利益2千万円が回収していくことになり、5年でめでたく投資回収となります。

 

そして、その後、毎年2千万円という本当の意味での利益、投資に対するリターンが生まれてきます。

 

これは実に単純な話です。設備投資は回収が終わってからが投資利益・リターンなのです。

 

大切なことなのでもう少し補足すれば、設備投資を回収するのは売上ではなく利益だということです(厳密に言えば、税引後利益に減価償却費を足し戻したキャッシュフロー)。

 

無論、売上が無ければ利益は生まれませんが、そういうことをお伝えしているのではありません。

 

お伝えしたいことは、設備投資の際に、売上のみならず利益を増やすこと、付加価値を高めること、生産性を上げること…といったことに知恵を絞っていたかどうかということです。

 

当然のことながら、設備投資時点で、その知恵や工夫が更なる利益を生むことにつながるかどうかなどやってみなければ分かりません。

 

ですが、本当の意味で設備投資の成功、設備投資でリターンを生もうとするのならば、設備投資時点で利益、付加価値、生産性…といったことの向上に知恵を絞って、そのことに賭けてみるしかないのです。

 

設備だけあれば付いてくるような売上が利益をもたらすでしょうか。その売上は競争原理から設備費を含めた原価に収束することでしょう。よって、努力に対して超過的な利益を生み出すことはありません。

 

むしろ、設備を持ってしまっていることで足元を見られて…が交渉の現実だったりします。

 

設備投資という挑戦。だからこそ投資時点で付加価値を高める今一歩の知恵を生み出す努力が大切です。

 

設備投資で売上規模を買おうとしてしまっていませんか?

渾身の挑戦投資、ならば付加価値向上に挑戦してみませんか?

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