【第425話】中小経営の成長筋ド真ん中“デマンドイノベーション”とは

「なるほど…、これまでの経営にどこか自分でもしっくりきてなかったところがあったのですが、その理由がやっと分かりました」と社長。

 

経営が日頃の課題対応に熱心な分だけ意識が内側に向かいがち、外のこと、経営環境やお客様のことへの意識が薄くなってきていました。

 

こうした際、お客様思考、マーケットイン思考で…などと言われますが、このことが大きな間違いへの一歩を踏み出すことになってしまうことが多々あります。

 

弊社では、新事業の立ち上げ、新商品の企画開発、新規顧客開拓…といった成長発展への取組みにあたって、原則、マーケットイン思考ではなくその反対、プロダクトアウト思考で…とお伝えしています。

 

その前に、こうした大きな間違いを歩み始めないために、知っておきたいことがあります。

 

ビジネスの進歩発展というのは、とかく技術革新、イノベーション…技術の進歩発展から語られがちです。このため、経営者もウチの技術は…といった文脈で強みが語られがちです。

 

事実、技術の進歩発展が実用の水準に達することで新たなビジネスが生まれます。技術リードで新たな需要が生まれることも確かです。

 

例えば、電気自動車、今日も目の前を走っていますが、こうした電気自動車は私が学生だった30年前から学園祭に展示されていました。

 

その当時はまだ鉛蓄電池、バッテリー容量が小さく走行持続距離が短く、実用の途に耐えないということで売れる車ではありませんでした。

 

そして、リチウムイオン電池が発明され、モーターや制御装置もデジタル技術が進展したことで、フツーに使える実用のレベルに達しています。

 

ここで気付いていただきたいことがあります。それは、実用化までに30年といった時間を要しているということです。技術の進歩発展とはそういうものなのです。

 

そして、こうした技術開発という長いイノベーション過程の中でもっと大切な気付きがあります。

 

それは、こうした技術が実用化される前に、もう人々の心にはこうした未来が描かれていたということです。

 

この意味で、イノベーションはまずお客様、需要、市場の側から起こっています。お客様側の求める水準、意識、未来…そうしたことから生まれています。

 

実のところ、このようにイノベーションはお客様側から生まれているのです。

 

技術開発に賭ける…ということの文脈は、人々が心に描いた未来像を技術で実現していくという順番なのです。この順番認識を間違えてはいけません。

 

技術開発は自然法則を読み解いていくことであり、まだ知見の及ばぬ自然法則の原理を探求していくことです。

 

ただし、技術開発にも色々あって、我々商売人は技術開発自体が目的の研究者ではなくて、その実用、お客様への応用に生きています。

 

この経営意識に立てば、技術開発のトレンド、イノベーション動向も知りつつ、もっと大切なのは、その技術開発、自然法則の探求の中で、お客様、需要、市場側が描いている未来像がどのように革新されているのかという点です。

 

こうお伝えすると「それはマーケットインなのでは?」とお考えかもしれませんが、そうではありません。

 

あくまでも自社が持てる能力、技術力…でき得ることを起点に持った上で、お客様側が頭に描いている市場に向けて応用を考えていきましょう、このことをプロダクトアウト思考で…とお伝えしてます。

 

ビジネス視点でのイノベーションとは、お客様の頭の中から始まります。これはいわば“デマンドイノベーション”と呼べるものであり、商売人のイノベーションの本質です。

 

お客様の願いを実現するための技術開発に賭けていますか?

その取り組みは“デマンドイノベーション”を追っていますか?

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