【第420話】資金調達に強い事業計画の重要視点
「追加の融資にあたって銀行から新たな事業計画を求められていまして、もっと大風呂敷を広げてみようと思っているのですが…いかがでしょうか?」と社長。
追加の融資調達に向けて、どうしたスタンスで説明に臨むのか、頭を悩ませておられました。
まずここでお伝えしたのは、事業の性質や現状を踏まえたならば、大風呂敷スタンスは無理筋だということでした。
その理由はとてもシンプルです。伝統的なビジネスで今の計画の遂行度もイマイチな現状で、もっと大きくやるから追加融資を…という説明は無理筋だということです。
こちらの企業では、まずネットで在庫の販売強化に着手し、売上の増加を目指しました。この実績を持って、こうした販売増加と新商品製造に伴う設備資金と運転資金ということで事業計画を策定し、追加の融資を受けました。
昨今、経営計画発表会、事業計画プレゼン、ビジネスピッチ…で、こうした大風呂敷スタンスを多く見るようになりました。
こうした成長意欲、積極姿勢、高い目標、情熱…といったことは、無論、素晴らしいことです。しかし、それは時と場合によって、もっと言えば相手によって使い分けていくことが大切です。
資金調達の事業計画には二つの型があります。それは「出資型」と「融資型」です。
ここで出資型とは、出資ですから返す必要のないおカネを集めようとするプレゼンです。返ってこないかもしれないリスクを覚悟の上で出資してくださいというものです。
ただし、上手くいけば配当などのインカムゲイン、もっとうまくいけば事業譲渡や上場といったことで莫大なキャピタルゲインを得られるかもしれません…と続きます。
もう一つの型である「融資型」とは、いわゆる返済を前提としておカネを調達しようとするプレゼンです。
このため、こちらのプレゼンでは、しっかりと返済できます…ということの説明が求められています。
当然のことながら、ビジネスというのはやってみなければ分からないことです。ただし、そのやってみなければ分からないにも程度があるのです。
まだ誰も実現したことのないようなビジネス、技術開発、イノベーション…といったことであれば、当然のことながら失敗の可能性も高いでしょう。反面、もしそれが成功したならば独壇場のビジネスで高い成長を期待することができるでしょう。
こうした事業計画の場合には、リスクマネーの調達ということですから出資型のプレゼンが適切といえます。
一方、ある程度、実績や成熟感のあるビジネスであれば、こうした類推から成功度合いを見極めることが可能です。そして、努力の結果、いくら儲かったからといっても金利以上にリターンを求められることもありません。
こうした事業計画の場合には、借入元本の返済に金利以上のリターンを求められない堅実マネーの調達が向いています。
昨今、事業計画のプレゼンで、挑戦、変革、破壊…といったスタンスが増えているのは、ベンチャーキャピタルなどからの出資型の資金調達が増えているからです。
一方、事業計画のプレゼンというのはそういうものだと勘違いして、融資の相談をしている銀行に向けてそのプレゼンを行ったとしたらいかがでしょうか。
銀行は、御社の計画を「貸したカネ、返してくれるだろうか」と心配しながら聞いています。ですから、こちらは「~~なので大丈夫です」と納得できる見通しを説明しなければなりません。
そうした場で、挑戦、変革、破壊…、志や情熱といったことで見通しを語ればどうなるか。ちょっと場違い…、それはよそでやってください、となってしまうことは明らかです。
事業のリスク度合いで資金調達手段を分けていますか?
出資型と融資型、頭を切り替えてプレゼンしてますか?