【第419話】新商品の販売開始がスムーズになるもう一歩の準備意識
「新商品を発売したのですが販売が振るわず…、営業には手詰まり感が漂い始めていまして、次にどうしたものか決めあぐねています」と社長。何とかしたい、どうしようもないかも…というお気持ち、とても良く分かります。
こうした際、現状を整理してみることで、自ずと次なる一手が見えてくるものです。そういった経営の打ち手を考える上で、全体的、構造的な物事の把握について思考訓練を積んでいるのがコンサルタントであり、こうした状況は腕の見せ所です。
まず新商品と呼ばれるモノには2つの種類があります。
一つ目は、既存のお客様に向けた新商品です。既に取引や納入販売実績があって、そうしたお客様に新たな商品を販売することを目指すものです。
もう一つは、新しいお客様向けた新商品です。いわゆる新事業と呼ばれるタイプで、これまでとは異なるお客様の開拓を伴うものです。
こうした意味で、新商品販売といっても、その中身は全く違います。そのことを理解せずに、新たなお客様の開拓を伴う新事業を、既存のお客様に向けた新商品のルート営業程度に考えていたとしたら、当然、売れることなど夢のまた夢…というのは言うまでもないことです。
それならば、ここでいう新事業、すなわち商品もお客様も新しい場合というのは、新商品が出来上がった時点ではまだ半分…、市場開拓というもう半分がまだ残っているということが分かります。
ちなみに、世の中の商売は、概ね「作る」と「売る」に大別されます。そして、作る仕事の人のいう「売る」は、限りなく決まった先への「納入」であり、売る仕事の人のいう「作る」は、限りなく既にできた商品の「模倣」であることがほとんどです。
こうした現状を分かった上で、新事業として新商品の販売を目指すならば、これまでの既存顧客への「納入」の意識を、お客様を新たに開拓する意識へと切り替えて、もう一段、気合を入れて取り組まなければならないことに気付くでしょう。
大切なことなので、もう少しまとめてお伝えするならば、新商品を販売するという場面において、新商品の物理的なカタチが出来上がった状態というのは、ビジネスとしてはまだ半分で、これから先、もう半分、市場開拓という仕事が残っているのです。
一般に作る仕事のメーカーとは、作るまでが仕事で、あとはその商品を卸売や小売が売ってくれるものと考えがちです。
このため、作る仕事の方々は、新商品が物理的に出来上がった時点で、自分たちの仕事は完了したと思ってしまうのです。
もちろん、この気持ちも分からないでもありません。新商品を開発するにあたっては、商品設計、調達、試作、検証、生産、保証、梱包、輸送…、多くの障壁を乗り越えて出来上がります。
新商品の開発にあたっては、仕上げ切ることができるかどうかも分からない中で、試行錯誤しながら、時に路線を修正しながら、迷いながら進み、やっと商品完成というゴールにたどり着きます。こうしてやっとゴールと思ったら売れない…という大きな壁が待っていることになります。
難しい話をしているのではありません。既存市場向けの新商品と新市場向けの新商品とでは、必要な準備が異なるということをお伝えしています。
新事業の場合、新商品の開発とは新市場の開発を含むものであり、新商品の開発で準備はまだ半分なのです。
だからこそ、新商品の開発は新市場の開発と行ったりきたりしながら同時並行的に進めることが望ましく、新商品が出来上がってから新市場…という手順の場合、準備不足や手遅れ感があったり、時に新市場向けに新商品に立ち返って修正を強いられるといった手戻りも発生します。
事業、ビジネスとは突き詰めれば「お客様活動」です。新商品が新たな市場を創ることは事実ですが、一方、市場創りまでが準備であることの意識が大切です。
新商品と新市場の開発に同時に取り組んでいますか?
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