【第355話】中小企業の社会性の果たし方…、3つのチェックポイント
「地域振興のために、ここで〇〇ビジネスを始めた…と言ってたんですよ。おかしいと思いませんか!」と某社長からメッセージ。某社長、とある企業を訪問し社長にお話をお聞きしてきたとのこと。
訪問先の企業、商品力が乏しいにも関わらずメディアなどには頻繁に登場されていました。そこで、やはり現場を見て、商品を確かめて、社長にお会いして…となった訳ですが、案の定、ダメだこりゃ…との確信に至りました。
なぜ、ダメだこりゃ…となったかといえば、この訪問先の社長のお話は、事業への取組意義だけで商品開発の創意工夫やお客様のことが出てこなかったからです。
昨今、社会課題、地域課題をビジネスで解決といった文脈や、SDGsといった目標達成にどのように関わっていくか…といったことがさかんに言われます。
これは今に始まったことではなくて、経営の世界でもその昔から企業の社会的責任、社会性・公益性・公共性、CSR、コンプライアンスといったことが言われ続けています。
ですから、こういった考え方自体、むしろ真っ当なことであり、当然のことながら目指していかなければならないことです。
ただし、前述の企業、何がおかしいかといえば、目的と手段が逆転してしまっているということです。大義名分が正しくても、その実践手段の選択で間違っています。
例えば、国連、国…といった機関であれば、高い目標を掲げることでリーダーシップを発揮して関わる民を導いていく…といった考え方が成り立ち得ます。これを「目標中心アプローチ」とすれば、これはいわば“お上”のアプローチです。
一方、我々、経営者というのは現場の人間です。現場最前線での実践者であり、こういった目的目標レベルを、実践を通じて実現していく立場にあります。よって目的目標を達成していこうとするならば地に足の着いた、いわば「実践中心アプローチ」でなければなりません。
ここで「実践中心アプローチ」の基本は、地に足の着いた実践、経営者ご自身の才覚、企業の組織能力、技術生産能力…といった具体的な実践力を活かしていくことです。自分たちが得意なこと、勝負できること、いわば本業を通じて世の中に貢献していくということです。ゴルファーがサーフィンを通じて世の中に貢献…はムリ筋というものです。
もうお分かりと思いますが“逆”なのです。「目標中心アプローチ」と「実践中心アプローチ」とでは物事の順番が決定的に違うのです。
ここで、「目標中心アプローチ」を事業経営に落とし込んでしまうと、経営に決定的な間違いが起こり得ます。その間違いと、事業は目標達成の手段だから何でもいい…となってしまうことです。「目標中心アプローチ」の経営が浮足立っていたり、商品力が弱かったり、採算が低かったりするのはこのためです。
そして、「目標中心アプローチ」によって、小さくともできることから…といった取り組みは、成果とは縁遠い「やらないよりはマシ」な活動に留まり、同時にこの間、本来目指すべき社会課題の解決は先送りされていくのです。
ここでハッキリとお伝えすれば、「正しい目標を設定しているから正しい経営」なのではありません。むしろ経営者は「正しい手段」の実践者としてお客様や世の中に貢献しています。
そして、この難しいことを「正しい目的目標」という制約下で実現し続けているということです。
ここで「正しい…」とは、すでに先人の知恵として分かっていることです。企業が社会性を発揮していくことの本質は、経営において道徳心、倫理観といったことを大切にしていくことです。
会社に遅れそうだからと赤信号を渡っていませんか、お客様の悪口を言っていませんか、今ほど出荷した商品は万全ですか、会計に間違いありませんか…。
妙な大義に乗ってヘンなボランティア活動に勤しむ前に、しっかりと地に足をつけてやるべきことがあります。
それは、「本業でお客様に応える」、「事業を採算に乗せる」、「この際、道徳・倫理を重んじる」といった視点で確認することができます。
地に足の着いた実践者として経営していますか?
妙な大義に乗っかる前に自社らしい道徳心を説いていますか?