【第354話】商売繁盛をもたらす独自性の生み方
「新事業の成否はスピリッツなんだということを改めて感じています」という某社の経営者、新事業で新たな顧客の獲得が順調に進んでいます。
ここでスピリッツ、情熱、精神性と聞けば、どうしてもただガムシャラに頑張る…といったことをイメージされるかもしれませんが、そうではありません。
どう違うかといえば、商売として一定の成功に至るためには努力にも筋があるということです。
とても簡単に言ってしまえば、最後の最後、次なる商売の入口は、これだというインスピレーションだとしかいいようのない感覚的なものです。
ただし、このインスピレーションにも深さ、浅さがあって、そこにこそ成否を分かつ明らかな一線が存在しています。
優れた社長、経営者、プロジェクトマネージャー…は、そのことを経験的に思い知っています。
では新たな商売の繁盛を企てる上で、どうやってその入口、大切なインスピレーションに至ることができているのか…というのが検討の筋ということです。
当然のことながら、新たな事業を企てようと望むならば、現状についての理解を深めておくことは欠かせません。
ただしこういった現状理解のための市場分析、市長調査といった過程に、大きな罠が潜んでいることも、優れた経営者は感じているところでもあります。
その罠とは…、答え探しになってしまうということです。ここで答え探しとは、新たな事業の構築を目指そうとする過程で、他社のコピペに堕ちてしまうということがあり得るのです。
大切なことなので補足すれば、市場分析、市場調査というのは、現状を大まかに把握するための検討過程であって、そこで急いで答えを探さないことが大切です。
この市場分析・調査で大切なのは、競合商品の細かいところや現状の技術水準などではなくて、先行・競合の思想の程度を把握することです。
これを言い換えるならば、市場分析・調査という過程を通じて、今の世の中の思想レベルを認識し、このことを通じて自分たちの立ち位置、視点、価値観といったことを見つめ直すことが大切なのです。
不思議なもので、市場に関する情報について一定量を積み上げると、いわば飽和点のようなところを超えると、バラバラだった知識が手を結び始めて、一つの塊を生み出す瞬間がきます。
市場分析・調査といったことは、決して答え探しではなくて、自らの新たな視点を見出すために行うものであり、その努力が一定量に達することで、自ずとインスピレーションが降りてくるものなのです。
新たなビジネスに手を着けるだけなら社長であれば簡単にできることです。難しいのは繁盛させることであり、そのために独自性は欠かせません。
ここで、独自性をオリジナリティと考えてしまうことで、人とは違う、奇抜…といったことに進みがちですが、これは違います。
そういう意味で、独自性とはむしろ個性、インディヴィジュアリティに近いことであって、ご自身の視点、自分の思想から生まれるものです。
端的にいえば、「自分が考えたらこうなる」ということから生まれる新規性が、独自性を生み出していくことになります。自分たちの考え方というフィルターを通すことで本物の独自性が生まれます。
独自路線を歩もうと市場分析・調査は不要…というのは間違いです。先人の知恵は修得しつつ、そこに自分たちで考えるというフィルターを通すことで商売繁盛につながる独自性が生まれるのです。
市場分析・調査で答えを探そうとしてしまっていませんか?
自分たちで考えた新しい答えで勝負しようとしていますか?