【第35話】事業開発を成功させる目標設定とは

新事業進出、新商品開発、大規模投資。。。こういった事業開発プロジェクトの難しさは、やるべき事自体が予め定まっていないところにあります。スタッフにとっても初めての経験がほとんど。既存能力領域を超えて挑戦領域に突っ込んでいるのですから当然といえば当然です。

 

事業開発プロジェクトでは、何から手を着けていくか、どんな方向に進めていくか、どう取捨選択していくか。。。そもそも論と格闘しながら推進していかなければなりません。正に“試行錯誤”の連続です。

 

しかし、こういった試行錯誤が連続する事業開発プロジェクトにあっても、事業を開始するという目標にたどり着くためには一種の成功パターン、検討手順が存在します。

 

その検討手順の中で特に大事なのが、事業開発プロジェクトの目標設定、すなわち事業を開始する時点でどのようなクオリティに達していることを目指すかという意識の持ち方です。

 

可能性を活かしきれていないな、勿体ないな、と思う事業開始をお見受けします。渾身の新事業、肝いりの新商品、社運を掛けた大規模投資。。。にもかかわらず、儲けを生むにはもうちょっとだけ準備が足りていないのです。

 

ではどういった準備が足りていないのか、どんな目標を設定しておけばよかったのでしょうか。

 

こういった残念な状況に陥らないために、まず前提として言えるのはモノだけで売れる時代ではない、という認識です。その提供の仕方や、得られる効用を“説明”するところまで含めて売り手側が準備しなければならない範囲なのです。

 

例えば、食品を製造されているのであれば、味・栄養、調理の手軽さ、包装パック・保存のしやすさといった物理的な特徴に加え、朝食に、酒の肴に、パーティーに。。。生活の中での利用シーンから最終的な消費者への便益を説明していかなければなりません。

 

そして、それらの説明は顧客に伝わるカタチで、パッケージやパンフレット、ホームページなどに載せられるようになっていることが必要です。

 

さらに実際の販売にあたっては、最終消費者への説明のみならず、その商品を取り扱う卸売事業者さんや小売事業者さんにとっての便益、例えば商品取扱いロット、商品梱包状態、保管方法等についても説明していかなければなりません。

 

だんだんとお伝えしたい主旨はお分かりいただけてきたかと思いますが、お客様の便益を説明するのはこちらの役割になっているということです。この商品をどのように使おうか、どこに置こうか、こんな使い方もあるか。。。などとお客様は考えてくれないのです。

 

足りている時代の到来によって商売が情報戦化しています。ですから、同じものを売っていても、便益の説明の仕方によって結果が変わってくるのです。競争が厳しい時代という面は否めませんが、こういった状況を踏まえておきさえすれば、何らか対処法はあるという事です。

 

そして便益を説明できることのメリットは「売れる」に留まりません。交渉上の立場にも影響を及ぼしますので、営業場面ではよりフラットな立場で交渉できますし、価格の主導権もややこちら寄りになりますので、「利益」を出しやすくなります。

 

“説明”という思考的努力、比較的準備にお金のかからない努力が利益を増やすのですから、取り組まないのは勿体ないと言わざるを得ません。

 

こういった望ましい状況がもたらされる構図は、“説明”という行為によってお客様からその市場の“専門家”と見なされるところにあります。説明がど真ん中ではなかったとしても、お客様から見れば自分達のことを考えてくれている専門家に見えるのです。

 

しっかりと説明しきる、という行為は、お客様よりも我々の方が知っている、専門家であるという立場の宣言でもあるのです。お客様に言われたものを作っているのではなく、我々専門家の知見を用いて作れば、お客様に最適な商品はこれになります、と提案しているのです。

 

このように顧客の便益を“説明”できる状態を、事業開発の目標に設定しておくことの利点はとても大きいのです。

 

御社の事業開発は商品・サービス開発に留まっていませんか?

お客様の便益を説明しきることに目標を置いていますか?

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