【第34話】儲けの方程式を持っていますか?

事業の方程式で最も単純な形は「収益-費用=利益」でしょう。これは損益計算書の基本構造であり、誰もがご存じの概念です。

 

ところが、事業経営の難しさは、費用が先に発生し、収益(売上)が後に来るという点です。つまり、常に先行投資の形でお金が手元から離れ、それ以上の収益を獲得できるかどうか確かではありません。

 

経営が確かな社長殿の部屋には大抵二つのアイテムが存在します。それは「理念」と「数字」です。そして、事業をご説明されるにあたっては、事業理念をなぜ数字として実現できるのかを儲けの「方程式」として解説されます。

 

例えば、我々は〇〇事業を行っており、主要な顧客は地域の方々である。年間計画に基づきイベントを四半期毎に開催し新聞折込チラシで反応率〇%程度で集客している。このイベントの来場者にはクーポンを渡し、この内〇%がリピートしてくれる。こういった継続的な取組の結果、リピート客の〇%が優良顧客層となり、そこからの売上が〇程度に積み上がり、全体として安定的に成長を遂げている。。。。といったご説明です。

 

別な例もお伝えします。私も良く利用させていただくイタリア料理のサイゼリヤ。「お客様においしい料理をリーズナブルに提供する。」という事業哲学をお持ちです。

 

サイゼリヤでは店舗を出店するにあたり、売上1億円が期待できるところに初期投資5千万円で進出します。そして売上高対営業利益率10%を実現します。もちろん、利益率10%のためには、セントラルキッチン方式など、主構造を支える副構造の設計もしています。

 

つまり、出店にあたり「投資額の倍を売上げ、その売上に対して10%の利益を捻出する」という方程式をあらかじめ設定しています。

 

もちろん、自社独自の方程式を考えるにはコツが要りますし、それを実現するための営業上の工夫も必要です。しかし、このたった一行の方程式を念頭に置くだけでどれほど勝算が上がるか、お察しは付くはずです。

 

実際に投資の採算計算を行ってみるとよく分かります。現実的な期間で投資を回収するためには、どんな投資でも概ね投資額の1~2倍程度の売上が無いと採算に合わない場合がほとんどです。

 

設備産業色の濃い製造業等の場合は、目標売上を設備投資額と同程度に設定することもありますが、いずれにしても、経営者方からは「そんなに。。。」という反応がほとんどです。

 

ですから、新事業や設備投資のご相談では、事業の成長拡大に向けて投資を応援したい立場であることをお伝えした上で、その設備投資額の倍の売上を実現する方程式についてお伺いすることにしています。

 

もちろん、最初は方程式などありません。これから考える事が必要ということをお伝えするためです。

 

こういった儲けの方程式は、それそのものが挑戦目標になっているという側面もあります。やるからにはこの方程式に乗る事業運営を目指して頑張る、方程式に乗るようにするための地道な創意工夫や修正を加え続ける、方程式という具体的な目標があるから現状を把握し修正できるのです。

 

方程式を持たないまま事業を開始するとどうなるか。資金が尽きない限り事業を続けることはできますが、方程式という事業骨子を探しながら迷走を続けることになります。そして、投資回収は延々と先送りになっていきます。

 

なんかずーっと上手くいかない。。。のは方程式の不在が主な原因です。作ってみた、売ってみた、売れない、といった流れ感の無い単発の試行錯誤では“顧客”という強靭な壁を突破することはできないのです。「収益-費用=利益」という損益計算書の単純な方程式では勝負できない時代といえます。

 

自社独自に儲けを生む方程式を持つことが今後ますます重要です。設備投資、広告投資、新規顧客獲得、顧客リピート。。。こういった投資対収益の構造を方程式として“あらかじめ”設計しておくことが大切です。

 

御社の事業理念と数字は方程式で結びついていますか?

儲けを生む「方程式」の上で事業が動いていますか?

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