【第336話】豊かな成長発展を歩む経営の“質”の高め方
「ちょっと最近の数字を見ていってください。今後、〇年に〇億円の達成に向けて、こういった計画で進めていく予定です」と、社長の声には目標達成への自信がみなぎります。
5年ほど前、新事業立ち上げの際に関わらせていただき、当時、描いていた目標をなぞるかのように成長されています。
ここで素晴らしいのは、その“質”です。高い自己資本比率、高い利益率を保って成長されているということです。
当然のことながら、経営において財務は極めて大切です。こちらの企業は借入先行型ではなく自己資本先行型で成長しており、利益率・付加価値も高いという点で、経営の質的に素晴らしいのです。
ところで、経営の質、その意味についてはなかなか具体的な理解が難しいものです。経営の質とは…、と聞かれてどのように答えられるでしょうか。
実のところ、経営者の考え方、経営の質が最も現れるのが「計画」です。計画を見れば、それが例えA4・1枚であったとしても、その質が現れます。
では、どのように現れるのかといえば、それは計画の中身の違い、まさに質として現れるということです。
経営の質が、残念ながら高いとは言い難い場合、計画はとかく行動計画になりがちです。これをやります、あれをやります…というToDoリストが計画としてまとめられます。
なぜ、経営の計画が単なるToDoリストになってしまうかといえば、経営自体が作業だからです。
大切なことなので補足すれば、経営が付加価値の創出、創意工夫ではなくて、作業賃だということです。
さながら、このような経営というのは、労働力、動くこと自体を直接的に現金化している状態であり、よって行動量の確保が計画化されてしまうのです。
動くだけならある意味で誰にでもできることです。頭など使わず動きさえすればできることを計画とするのであれば、それは事業経営の計画と呼べるのでしょうか。それは単なる「スケジュール表」であり、断じて事業経営の計画などではありません。
では、豊かな成長発展を歩むために欠かせない計画、経営の質を高めていくためには、どのようにすれば良いのでしょうか。それは、「経営に意味を与え、行動に意図を込める」ことです。
まず大切なのは、この事業に取り組むことについて“意味”を与えることです。この事業は世の中にどのような影響、進歩発展をもたらすのか…といったことを具体的に語れることが大切です。
そして、その意味の下で、行動はやりさえすればできる単なる作業ではなく、創意工夫のための行動を計画することです。
つまり、計画が行動ではなくて創造になっているかどうか…。これこそが経営の質、計画の豊かさを決定づけるのです。
そして、行動に意図を込めるとは、行動の実行を目標とするのではなくて、目指す目標状態から逆算して、それを達成していくためにどのようなトレーニングを積んでいけばよいかを行動化していくことといえるでしょう。
計画した行動の実行が目標になっているのか、あるいは高い目標状態を達成していくためにどのようにトレーニングを積んでいこうとしているのかの違いが経営の質の違いといえることです。
これを違う視点から見れば、経営が労働力の現金化に留まっているのか。あるいは、もう一歩進んで労働行為が付加価値創造に結び付けられているのかの違いです。
この視点、質的向上の視点で計画を見直さない限り、いくら行動量を増やしたところで同じところを回っているだけですから現状打破は難しいでしょう。
経営の質を高める意識で計画を立てていますか?
質を高めるために行動量ではなく創造量を計画していますか?