【第332話】ビジネスに成功をもたらす“新規性”の生み出し方
「まだまだ右肩上がりに伸びていて、日数が少ない今月も過去最高を更新していく見通しで…」と社長。5年ほど前からスタートした新事業を順調に伸ばされています。
こちらの社長の素晴らしさは、過去の失敗経験も踏まえて、新たなビジネスを一定の巡航にまで離陸させるために不可欠な条件を肌感覚で養っておられることです。
その不可欠な条件とは、新事業の核となる事業モデル上の“新規性”を一言で説明できることなのですが、その新規性にこそ成功条件が隠れています。
というのも、新規性にもいろいろあって、単に新しい要素があるというだけで、成長ビジネスに仕上げられるかといえば、それはまた別な話という訳です。
例えば、「これは全く新しい商品なんです」、「これは新しい技術なんです」、「特許を取得している技術を用いた商品で…」といったことで新規性をご説明いただく機会があります。
ところが、こういった新規性のご説明は、多くの場合、ビジネスというステージではまだ生煮えで、その意味から成功水準に届いていない場合がほとんどです。
まずはここまでのご努力に頭の下がる思いなのですが、事業経営がやはり数字として結果を出してナンボの世界ですから、これらの新規性はビジネスという視点からすると「まだ未完成」と言わざるを得ません。
このため、ここからどのように完成に向けて煮込んでいくか…という議論を進めていきたいのですが、それがなかななに難しいという現実があります。
それは、ご本人たちは「完成している」と思っているということです。
こうした状態の時、自らに問うていただきたいのは、ビジネスの次元で完成しているかということです。
これは言うならば、その新規性が「お客様」にとって新しい価値をもたらしているかという問いです。
当然のことながら、「技術・製品の完成」と「ビジネスの完成」は別次元にあるということです。
どれだけ新しい技術や製品であっても、ここからもたらされる価値、便益がお客様にとって新しくなければ、それを新たに買う必要などないことは明らかです。
大切なことなので補足すれば、お客様にとっての新規性とは、「どう嬉しいのか」ということが「これまで以上」であるということです。
つまりは、用いている技術や能力といったことは、ある意味でどうでも良くて、お客様にとってこれまで以上にどう嬉しいのかを説明できていることが、新規性の肝だということです。
このことは新規性の設定の仕方、新事業構築の切り口に大きな視点と可能性を示してくれます。それは、新規性が主に技術の高度さといったことよりもむしろ、お客様への応用レベルの問題だということです。
これを逆から見れば、ベーシックな現有技術であっても、この先まだまだ新たなビジネスに応用展開していける可能性があるということです。
言うまでもなく、組織の能力や技術を高めていくための努力は必要です。ただし、勘違いしてならないのは、何のために能力技術を高めるのかということです。
我々商売人の研究開発とは、お勉強ではありません。ましてや何かの試験で高得点を目指すのとも根本が異なります。
ビジネスの完成として新規性を語ろうとするならば、それはお客様にもたらされる新たな価値や便益の新領域として語られるべきことです。
能力技術の新しさ止まりであったならば、それはまだビジネスとしては未完成で、そこからの煮込み方として大切なのは、お客様にもたらす価値や便益という答えから逆算して煮込んでいく姿勢といえるでしょう。
新規性は、お客様へもたらす価値・便益で語られていますか?
まずは現有技術の応用で新規性を目指そうとしていますか?