【第331話】存続発展の道筋に違いをもたらす二種類の事業意欲

「ゼロからは厳しいけど、元手が〇円くらいあればそれなりの事業を創ってみせる」というのは、とある壮絶な社長人生を送られてきた方のお言葉です。

 

社長、特に創業社長というのは、徒手空拳、たかだか知れた資金から、自らのアイデアや技術を元手に、事業を育て、人を育ててきた経験から今があります。

 

このため、どんな世の中でも、いつであっても…、やってやるという意欲をお持ちの限り、また目指す未来を切り拓いていくであろう強さを感じます。

 

ここで、未来を切り拓いていく…というのは、ご本人が生き抜いていくであろうというよりは、また新しい歴史を創っていくのだとうという感覚に近いものです。

 

なぜ、未来の切り拓き方にこのような色の違いが生まれるかというと、実のところ決定的な違いがあります。

 

それは、こういった際の意欲には種類があり、その違いが事業経営の違いとなって如実に現れてくるからです。

 

ちなみに、経営者の意欲とは、いわば経営者の欲求の矛先といえることです。この矛先の違いとは、端的に言えば、探求心に向いているのか、あるいは、おカネに向いているのかの違いです。

 

当然のことながら、事業経営とは存続発展を賭けたものである以上、おカネを無視して続けられるはずもないことは小学生でも分かることです。

 

ですから、探求心とおカネ、このどちらが良くてどちらが悪い…といった相反するものであるかのような二元論としてお伝えしているのではありません。

 

稼がなければ続けていくことができないという現実世界にあって、何を主たる目的に据えるかという順番の問題です。

 

むしろ、経営を勘所良く進歩発展させていくために、これら探求心とおカネという二つの要素に対して、どのように優先順をつけていくかということの進め方をお話しています。

 

実のところ、経営には、この二つの要素、探求心とおカネのバランスによって、実体事業と金融事業という性格に色づけられます。

 

これは、「経営は投資」と考えれば、その投資リターンの構造から色合いが違ってきます。

 

ちなみに、探求心を優先した経営の場合、経営は実体的になり、投資はまず技術能力の向上に投下され、その後、それらの力を発揮してリターンを得るという順番になります。

 

一方、おカネを優先した経営の場合、経営は金融的になり、投資は今できる難易度の範囲で広くリターンを得ようとする方向に向かいます。

 

経営は投資であり、いずれこの投資が何らかのリターンを生んでくれます。しかし、この投資意識の違い、探求心かおカネかの違いによって、経営の存続発展は極めて異なる道筋をたどることになります。

 

探求心を目指す経営は、掘ることに伴って拡がっていくという順番でリターンが生まれていきます。一方、おカネを目指す経営は、まず拡めることが先にあって、拡がったことで深さというリターンが生まれてきます。

 

いずれの道のりも、経営者の意欲が在る限り続いていくものです。問題は経営者の意欲がいずれ限界を迎える時が来るということです。

 

ここで探求心とおカネ、どちらが意欲に限界をもたらしやすいでしょうかということです。ある程度、おカネ持ちになってしまえば、おカネによる事業意欲は廃れてしまいがちです。ところが、探求心による事業意欲は、限界を迎えにくいのです。

 

仕事の道は、何が儲かるかといった分析的なことで進むよりも、経営者ご自身の探求心で歩んでいくのが吉です。

 

おカネを除いた意欲の向く先が進むべき方向です。どんな商売であったとしても、探求心でそれを採算に乗せようとしていく深堀意欲が、投資リターン最大化の王道です。

 

存続発展の戦略は、おカネ以外の探求心に従っていますか?

投資は、“拡める”よりも“深める”に向かっていますか?

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