【第32話】次の一手を生み出す市場分析のコツ
事業を経営していく上で絶対に必要な要素は、お客様の事情、そのお客様に応えるための能力、そしてその事業を運営していくために関連する法令等です。極端に言えば、これらさえあれば、当面事業を行っていくことは可能です。
ですが、時代は常に進化しています。お客様を創り続けていくためには、“次の一手”を考え続けなければなりません。
みなさまにおかれましては、毎日どっぷりとその事業に浸ってますので、業界の事情はとても詳しく分かっておられます。ですから、あらためて市場分析など不要とのお気持ちがあることも承知しています。ところが、悔しいことに過去から今を知っているだけでは、“次の一手”を生みだすことはできません。
また、可能性のありそうな“次の一手”に、手当たり次第取り組んでいくのも無理というものです。時間や予算、人員に制約がある以上、何でもかんでもという訳にはいきません。そこで「市場分析」が必要になります。
市場分析にあたって重要になってくるのが情報の探し方です。市場分析は事業を成長発展させるためであり、世の中のことを幅広く知ろうとしているのではないし、単純にお金になりそうな話を探しているのでもありません。
では、効果的に情報を探すためにはどうしたら良いか。それは、立ち位置をハッキリさせてから情報収集を始めるということです。そして、その立ち位置とは現有の「独自能力」です。苦労してこれまでに積み上げてきた財産です。
情報収集は単に儲かりそうなネタを探しているのではありません。自社の能力を高めつつマネタイズ(収益化)していく道を探しているのです。
他社が能力をどのようにマネタイズしているのか、という視点で情報を収集することで、業界や商品といった既成の枠にとらわれることなく、当社の未来の収益分野を見出すことができるようになります。
そしてもう一点。統計やデータを集めただけで有意義な市場分析ができあがることもありません。これだけでは市場分析として大切な部品が不足しています。
市場分析は人がやってない事を探しているのではありません。自社独自の方向性を見出しそこに行くことが目的です。ですから、過去の整理ができただけでは不十分ということです。
では足りない部品とは何か。それは、自社独自に見据えた「未来構想」です。これがあって初めて実務性のある市場分析になるのです。
折角、苦労して独自能力の向上や拡大に取り組んでいても、自社独自に見据えた未来構想が無いと、その挑戦は他社への単なる追従行為に成り下がってしまいます。自分達では違うと思っていても、お客様からはそう見えてしまうのです。
そして、独自能力は利益の源泉ではあるものの、その能力の差だけで利益の差を生むことは難しい時代になっています。だからこそ“なぜ”その事業に取り組んでいるのか、どんな未来をハッピーだと考えているかという未来構想を掲げることの重要性が増しています。
ただし、この未来構想は顧客へ迎合し、単純に賛同を得るためのものであってはなりません。昨今では、世のため人のためといった、人当たりの良い未来構想が目立ちます。良い事をしているので賛同してください、応援してくださいと。。。
もちろん、公明正大な事業意義は大切です。しかし、事業家の挑戦とは、自らの事業を通じて世の中に貢献することであり、そのために自ら難行苦行ともいえる道を歩んでいくという覚悟を伴うものです。自らの能力を高め事業化することで世の中を支えようという気概の現れなのです。
独自の未来を描き、お客様のために、ただひたむきに努力している姿にこそ人は共感するのであって、表面的な賛同や応援だけで売上が立つほど世の中は甘くないと心得るべきでしょう。
御社では、自社の独自能力から情報を探していますか?
そして、次の一手は御社が描く未来構想につながっていますか?