【第309話】“作った”で終わるか、“創った”まで登れるかの超えるべき境界線

「この商品は、これまでになかった全く新しい〇〇なんです」と仰る商品は、すでにカタチとしては出来上がっており、これから販売を拡大していきたいとのご意向です。

 

開発秘話をお聞きすれば、とても苦労され、いくつもの壁を越えてこられており、これまでの努力に頭の下がる思いです。

 

そんな思いから、「全く新しい商品ならば、どうやって売っていく予定ですか?」とお聞きすると、一転、社長の顔が曇ります。

 

その理由は実にシンプルです。「展示会では好評を得たが、実際には全然売れない…」という厳しい現実に直面していたためです。

 

商品をカタチあるところまで作り上げるというのは実に大変な苦労を伴います。関係法令、規格、材料、調達、設計、デザイン、製法、検査、取説、パッケージ、梱包、パンフレット…、準備すべきことが山ほどあります。

 

このため商品が一定のカタチに仕上がると、出来上がった喜びから「完成」したと考えたいという心情が生まれます。

 

これは、開発課題を全てつぶしたと思いたい、開発の苦労から解放されたい、もうこの位で勘弁して…ということで勝手にゴールしたと思っているだけであって、まだゴールテープを切っていない状態と言えます。

 

このため、最後の最後、ビジネスとしての成功を見る直前まできて、開発投資の回収もままならず、「高い勉強料」に終わってしまうことが実に多いのは残念なことです。

 

これはある意味、新商品開発のゴールを、あらかじめどう定義しておくか…という原点的なことでもあります。

 

なぜこのようにゴール直前まできているにも関わらず、ゴールテープを切れないということが起こるのか…。

 

その理由はシンプルです。自分たちの仕事は「作る」ことだと考えているからです。

 

ちなみに、前述の社長も、新商品の説明をされる際、その商品の特徴や良さをアピールされています。

 

このような説明がどういうことかといえば、「いい商品なので売ってください」と言っているということです。

 

メーカーが作り、流通業が売る。こういった古い流通販売構造が頭にこびりついているため、この新商品を売るための営業トークは流通サイドに任せようとしてしまっています。

 

多くの技術系、エンジニアリング企業が「作る」までを仕事と考えているために、販売をしくじります。

 

その心はこうです。「この素晴らしい新商品を売るのは、あなた方の仕事だ」と。「誰かが売ってくれる」ことを前提にしてしまっているのですから、上手くいくはずがないのです。

 

このため、弊社では、自分たちで売ることを想定して準備を進めることをプロジェクトの目標に設定しています。

 

高い技術・能力を誇りそれ自体を仕事にするのは研究者のスタイルです。経営者の仕事スタイルとは、高い能力・技術を目指すと同時に、その能力・技術をお客様のために応用して、商売を創っていくことです。

 

新商品を作るだけなら、世界中に能力・技術を持つOEM企業があまた存在し、大抵のモノは作ってもらえるということを知っておかなければなりません。

 

新商品の販売拡大は、その商品性が新しければ新しいほど、お客様の頭の中で「購入後」を想像してもらえるかどうかにかかっています。

 

この状態まで仕上げることが商品開発であり、この状態で情報発信するから、お客様の反応を得られるのだということを原理として心しておくことが大切です。

 

営業活動が販売ではなく売ってくれる人探しになっていませんか?

その新商品は「購入後」を想像できますか?

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