【第308話】ビジネスを発展させる設備投資に欠かせない3つのアイデア視点
「この工場建設に賭けてみようと考えています」という社長のお話に、「この投資は、このままだと借金返済への挑戦に終わってしまいます」とお伝えすると、社長の顔が曇ります。
ちなみに、弊社では積極的な設備投資を推奨しています。事業を健全に発展させていくためには、先行的な投資、種まきが欠かせないからです。
設備投資によって、経営体としてでき得ることが格段に増えます。設備が働いてくれるようになりますし、それは人の何倍も効率的です。
例えば、研究設備であれば開発スピードを向上させますし、生産設備は人手では難しいことや量をこなしてくれます。物流設備は生産計画とお客様へのデリバリーに柔軟性をもたらします。店舗設備であれば販売を促進したり効率化してくれます。
このように、設備は経営としての強さを築く上で欠かせないものではあるのですが、そうであるが故に、設備のパワーだけに頼って導入投資を実行してしまうという失敗が頻繁に起こります。
大切なことなのでもう少し補足すれば、設備さえ導入すればできてしまう仕事をイメージして投資を実行してしまったならば、その投資は投資額の回収以上の利益を生まない可能性が高い…とお伝えしています。
つまり、設備投資は、経営者の持っているアイデアを増幅する力を持っていますが、その核となるアイデアなくして設備投資を行ったところで、投資で得た設備能力を超えた成果は望めないということはご想像いただけるものと思います。
そしてこれは、あることを意味します。この設備投資は上手くいって投資額の回収トントン。つまり、この投資を借金で実行していたとするならば、借金返済がトントン。よって、借金返済への挑戦…という訳です。
渾身の設備投資、投資回収リスクを負うのですから、これが単におカネを使うことに留まってしまってはもったいないのです。
そして、この投資時点で付加価値アイデアを考えておかないと、後からでは難しいという現実があります。ですから、設備投資にあたっては、御社独自のアイデアを持って踏み切ることが大切なのです。
では、設備投資において欠かせないアイデアとは…、3つの視点が大切です。
〇投資回収を早期化するフィナンシャルアイデア
まず、会計上、設備投資は現金が固定資産に姿を変えただけなので、資産として何も失っていないと考えるのは間違いです。設備投資は投資額分のマイナスからスタートして、減価償却費と税引後利益で投資を回収していくというキャッシュベースで考えるべきことです。この投資回収までが採算創りであり、その投資回収を終えていないうちに、設備投資で売上利益が増えた…と、一喜一憂すべきことではありません。
投資回収以降が利益を生んでいるという意識に立てば、投資回収期間を早期化するような分割段階投資、OEM、リース、契約の建付け、キャッシュコンバージョン、制度融資…、フィナンシャルなアイデアを投資に埋め込むことが大切です。
〇粗利を向上させる付加価値アイデア
設備さえ導入すれば誰にでもできることを投資の目的に据えてはなりません。生産能力をそのまま切り売りすれば、それはお客様の下請け代行にすぎません。よって、価格は設備の使用料として設定されますから、設備投資の回収はギリギリ、投資リターンを生まず回収もままならなくなるのは明らかです。
設備投資にあたっては、投資で得た設備能力を原資として、それ以上の商品・サービスに転換して提供するという付加価値アイデアを埋め込んでおくことが大切です。
〇理想を見据えたドメイン拡大アイデア
ビジネスの発展とは、仕事と呼べる範囲を拡げていくことです。ただし、この意味は、単に手広くといったことではなく、深堀りすることで自ずと周辺領域が拡がっていくイメージです。そして、設備投資は世の中の後追い的に必要性から投資するのではなく、独自に掲げた理想に向かって投資していく意識が欠かせません。
職人的経営者にありがちな失敗として、設備能力だけ高めるもその技術の応用・用途を欠くため、むしろ顧客を狭めてしまう場合があります。設備投資にあたっては、市場領域の新しい切り口、事業領域を拡大、再定義、更新していく意図あるドメイン拡大アイデアを伴っていることが大切です。
設備投資で今よりも付加価値を上げていますか?
その設備投資はリターンを生みつつドメインを拡げていますか?